2012/8/27

環境・通信・その他

排出枠入札の一部延期計画、法改正に向け9月に作業部会

この記事の要約

欧州委員会は先月、二酸化炭素(CO2)排出権の供給過剰による排出権価格の下落に対応するため、排出量取引制度(EU-ETS)で2013年以降に実施される排出枠の入札を一部延期する計画を打ち出したが、EU加盟国は9月に作業部 […]

欧州委員会は先月、二酸化炭素(CO2)排出権の供給過剰による排出権価格の下落に対応するため、排出量取引制度(EU-ETS)で2013年以降に実施される排出枠の入札を一部延期する計画を打ち出したが、EU加盟国は9月に作業部会を開いて同構想を実現するための法改正について協議するもようだ。ブルームバーグ通信がEU議長国を務めるキプロス高官の話として報じた。

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EU-ETSではこれまで90%以上の排出枠が対象施設に無償で割り当てられてきたが、第3期間がスタートする13年以降は段階的にオークションによる有償割当への移行を進め(発電部門は原則として100%オークション)、27年までに全面移行することが決まっている。しかし、景気の低迷で生産活動が停滞し、排出枠に膨大な余剰が生じて排出権価格は過去1年間に40%以上も下落。今年4月に1トン当たり5.99ユーロと史上最安値を記録した後、現在も6ユーロ台後半から7ユーロ台前半で推移している。企業に環境投資を促すには最低でも20ユーロの排出権価格を維持する必要があるとされるが、市場ではEU-ETSが計画通りに運用された場合、排出枠の余剰分が20年時点で14億トン超に達し、少なくとも今後5年以内に排出権価格が1トン当たり15ユーロを超えることはないといった試算がある。

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ブルームバーグによると、加盟国は9月7日と17日にブリュッセルで作業部会を開き、排出枠の入札延期に向けた法改正について協議する。どの程度の排出枠を保留するかなどについて決定する際の欧州委の権限が議論の中心になる見通しだ。10月25日には環境相理事会が予定されており、作業部会のたたき台を基に加盟国の合意が得られれば、欧州委が提案している「バックローディング」(EU-ETS第3期間の最初の3年間は競売にかける排出枠を減らし、16年以降に削減分を含めて入札を実施する手法)による排出枠の需給調整が早期に実現することになる。

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当初の計画によると、13年は総排出枠の60%が有償配分となり、13 -15年の3年間におよそ35億トン分の排出枠がオークションにかけられることになっていたが、欧州委の構想ではこのうち一部の入札が16年以降に先送りされる。対象となる排出枠は4億トン、9億トン、12億トン分の3通りが想定されており、欧州委は各方面との協議を経て年内に最終決定する方針を示している。

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