2012/9/17

環境・通信・その他

ノルウェーが排出量取引制度に補償制導入、製造業の国外移転防止

この記事の要約

ノルウェー政府は11日、温室効果ガス排出規制に伴うコスト負担により国内企業が規制の緩いアジアなどに製造拠点を移す事態を防ぐため、エネルギー集約型産業を対象に助成を行う総額9,000万ドルの補償制度を導入すると発表した。E […]

ノルウェー政府は11日、温室効果ガス排出規制に伴うコスト負担により国内企業が規制の緩いアジアなどに製造拠点を移す事態を防ぐため、エネルギー集約型産業を対象に助成を行う総額9,000万ドルの補償制度を導入すると発表した。EUは排出量取引制度(EU-ETS)の第3期間がスタートする2013年以降の制度改正に伴う域内企業のコスト負担を軽減するため、加盟国が共通ルールに従って厳しい国際競争下にある産業分野を対象に補助金を拠出できる仕組みの導入を決めており、EU-ETSに参加するノルウェーも同様のスキームを導入して「カーボンリーケージ」現象を防止する。

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ノルウェーは2020年までに温室効果ガス排出量を1990年比で30%削減するとの目標を掲げ、05年1月に温室効果ガス排出量取引制度の運用を開始。市場の流動性を高めるため、08年から同制度をEU-ETSに連結させている。同国では二酸化炭素(CO2)排出量ゼロの水力発電がエネルギー需要のほとんどを賄っているため、発電部門は規制の対象になっていないが、EU-ETSでは電力会社が削減目標を達成するためのコスト上昇分を電気料金に転嫁しており、その影響でノルウェーでも電力価格が上昇傾向にある。政府はこうした現状を踏まえ、排出量取引制度の対象企業が新たなコスト負担を理由に国外に拠点を移す事態を防ぐため、アルミ、鉄鋼、製紙、化学など大量の電力を消費する15のセクターを対象に、EUと同様の補償スキームを導入することを決めた。

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ストルテンベルグ首相は会見で「国内の製造業が規制の緩い国に移転する事態を防ぐのが補償制度の狙いだ。新たなスキームを通じて温暖化対策と産業政策の両立は可能であることが証明されると確信している」と述べた。

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EU-ETSにはノルウェーのほかにアイスランドとリヒテンシュタインが参加している。さらにEUと豪州政府は8月末、双方の排出量取引制度を連結させ、対象企業がいずれの市場でも排出枠を購入できるようにすることで合意。今年7月に炭素税を導入した豪州が排出量取引制度に移行する2015年7月から段階的に両制度の連結を進め、18年7月の完全実施を目指す方針を打ち出している。

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