2012/9/24

産業・貿易

仏がGMトウモロコシの禁輸要請か、発がん性の懸念で

この記事の要約

フランスのエロー首相は20日、同国の研究チームが公表した遺伝子組み換え(GM)トウモロコシ「NK603」と発がん性の関連を示す実験結果の信頼性が確認された場合、ただちにEU域内への輸入を禁止するよう欧州委員会に要請する方 […]

フランスのエロー首相は20日、同国の研究チームが公表した遺伝子組み換え(GM)トウモロコシ「NK603」と発がん性の関連を示す実験結果の信頼性が確認された場合、ただちにEU域内への輸入を禁止するよう欧州委員会に要請する方針を明らかにした。現在、仏食品環境労働衛生安全庁(ANSES)が政府の指示で実験結果の検証を行っており、数週間以内に見解が示される見通し。NK603は欧州食品安全機関(EFSA)の「安全宣言」を受けて域内への輸入が認められているが、エロー首相は「実験結果の正当性が確認された場合、禁輸を含め、人間と動物の健康を守るために必要なあらゆる措置を講じるようEU当局に求めていく」と強調している。

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問題となっているのは、米モンサントが開発した除草剤「ラウンドアップ」に耐性を持つGMトウモロコシ。専門誌「食品と化学毒性(Food and Chemical Toxicology)」に掲載されたカーン大学の研究チームの論文によると、マウス200匹を使った2年間にわたる実験では、NK603入りのエサを食べるか、ラウンドアップに接触したグループでがんの発生率が高いことが確認された。特にメスでがんの発生率が高く、実験開始から14カ月目のデータによると、NK603が与えられず、ラウンドアップにも接触しない「コントロールグループ」では発生率がゼロだったのに対し、他のグループでは発生率が10-30%に上った。さらに24カ月目の比較では、コントロールグループのがん発生率が30%程度だったのに対し、その他のグループではこの割合が50-80%と高く、早死にするケースも多かった。

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実験を主導したカーン大のセラリーニ博士は、通常のマウスの寿命に相当する2年間という長期にわたって実験を行った意義を強調。「今回の調査はGM作物と除草剤の影響について長期的に追跡を行った初めての試みであり、実験結果は警戒すべきものだ」と警告している。一方、専門家の間からは、今回の実験ではコントロールグループが全体の1割に当たる20匹とサンプル数が少ないため、データの信頼性に問題があるといった意見も出ている。

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EFSAは2009年、90日間にわたるマウス実験の結果を基に、NK603は遺伝子組み換えを施していない通常のトウモロコシと同様に安全との判断を示し、これを受けて欧州委がEU市場への輸入を認可した。ただし、域内での栽培は認められていない。

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