2012/10/29

産業・貿易

欧州議会がMiFID改正案を可決、高頻度取引の規制など追加

この記事の要約

欧州議会は26日の本会議で、金融市場の透明性向上を目的とする金融商品市場指令「MiFID」の改正案を賛成多数で可決した。市場の透明性向上と投資家保護の強化を目的として、これまで規制の枠外にあった債権などの投資商品や私的プ […]

欧州議会は26日の本会議で、金融市場の透明性向上を目的とする金融商品市場指令「MiFID」の改正案を賛成多数で可決した。市場の透明性向上と投資家保護の強化を目的として、これまで規制の枠外にあった債権などの投資商品や私的プラットフォーム上での取引を幅広く規制対象とすることや、専用のプログラムを用いて1千分の1秒単位で自動的に発注を繰り返す「高頻度取引(HFT)」に対する規制などを柱とする内容。今後、EU財務相理事会で改正案について検討を進める。

\

2007年11月に施行されたMiFIDは、資本市場および投資サービスの基本法として重要な役割を果たしてきたが、規制対象が限定されているため市場の透明性が確保されておらず、これが金融危機を招く一因になったと考えられるようになった。欧州委はこうした反省に立ってMiFIDの見直しに着手し、昨年10月に現行指令の改正案(いわゆる「MiFID II」)をまとめた。

\

現行指令は取引プラットフォームを「規制市場」と「多角的取引施設(MTF)」に分類し、取引情報などの開示を義務づけているが、規制市場外での取引や、債権や商品デリバティブなどは規制の対象になっていない。MiFID IIでは市場の透明性を高めるため、規制市場やMTFで取引される株式以外の商品についても情報開示義務の対象となる。また、規制市場とMTF以外の私的な取引プラットフォーム全般をカバーする「組織化された取引施設(Organised Trading Facility=OTF)」と呼ばれるカテゴリーを新たに設け、これまで規制の枠外にあったプラットフォーム上での取引を幅広く規制対象とすることも改正案の柱になっている。

\

一方、相場を乱高下させるリスクの高いHFTに関しては、欧州委は新たに「アルゴリズム取引」と呼ばれるカテゴリーを設けて規制対象とすることを提案していたが、欧州議会ではさらに一歩踏み込んで、すべての取引は発注から少なくとも500ミリ秒(0.5秒)が経過するまでキャンセルまたは変更できないとするルールを加えた修正案が可決された。修正案にはこのほか◇投機筋による食料などの価格つり上げを防ぐため、商品先物市場でトレーダーが一定の時間内に持てるポジション(建玉)に上限を設ける◇すべての取引施設に対し、取引価格が急激に大きく変動した場合に相場を安定させるため、取引を一時停止する「サーキットブレーカー」制度の導入を義務づける――などが盛り込まれている。

\