2012/11/5

産業・貿易

空港発着枠の二次取引制度導入で合意、消化率引き上げは見送り

この記事の要約

EU加盟国は10月29日の運輸・通信・エネルギー相理事会で、域内空港の発着枠(スロット)の配分に関するルールの改正案について協議し、航空会社が余剰発着枠を売買できる仕組みを導入することなどで合意した。発着枠の運用を効率化 […]

EU加盟国は10月29日の運輸・通信・エネルギー相理事会で、域内空港の発着枠(スロット)の配分に関するルールの改正案について協議し、航空会社が余剰発着枠を売買できる仕組みを導入することなどで合意した。発着枠の運用を効率化して慢性的な過密状態にある空港の旅客処理能力を改善するのが狙い。今後、欧州議会で法案について検討する。

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EU内では英ヒースロー、独フランクフルト、伊ミラノなど5つの空港ですでにフル稼働の状態となっており、何も対策を講じなければ、2030年には域内19の空港がパンク状態になるとみられている。このため欧州委員会は、1993年に導入された空港発着枠の配分に関するルールの見直しを進め、昨年12月に空港の混雑解消を目的とした「空港パッケージ」と呼ばれる法案を打ち出した。

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現行ルールによると、航空会社がシーズン単位で確保している発着枠の利用率が80%を下回った場合、次シーズンは発着枠が没収されて他の航空会社に割り当てられることになっている。欧州委はより効率的な空港運用を実現するため、航空会社に義務付ける発着枠の消化率を85%に引き上げることを提案していたが、加盟国からは発着枠を確保するため、需要がないにもかかわらず無理に便を維持するケースが増えるといった指摘があり、閣僚理では反対派が多数を占めた。

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加盟国は欧州委案に代わる措置として、航空会社間で余剰発着枠を売買できる(二次取引)制度を導入することで合意した。ただし、一部の航空会社による発着枠の独占などの弊害が生じた場合、加盟国は独自の判断で一時的に発着枠の二次取引を制限することができる。一方、発着枠が効率的に再配分されるよう、加盟国は発着枠の返還が遅れた航空会社に対する罰則を設けることが可能になる。加盟国はこのほか、発着枠の配分プロセスの透明性を高めるため、発着枠の配分に関して決定権を持つ調整者(コーディネーター)の独立性を確保すると共に、各国のコーディネーター間の協力体制を強化することでも合意した。

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