2012/11/5

産業・貿易

GSP新制度で受益国は約半分に、露・ブラジルなど対象から除外

この記事の要約

欧州委員会は10月31日、EUの一般特恵関税(GSP)制度に関する新規則を発表した。現行制度は2013年末で終了するため、欧州委が昨年5月にGSP制度の改革案をまとめ、閣僚理事会および欧州議会に承認を求めていた。2014 […]

欧州委員会は10月31日、EUの一般特恵関税(GSP)制度に関する新規則を発表した。現行制度は2013年末で終了するため、欧州委が昨年5月にGSP制度の改革案をまとめ、閣僚理事会および欧州議会に承認を求めていた。2014年1月から新規則が適用される。

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GSPは貿易の促進を通じて開発途上国の発展に寄与する目的で約40年前に導入された制度で、途上国からEUへの輸入品のうち、一定の条件を満たす物品について輸入税を免除または軽減する仕組み。ただし、長年の間にGSP制度は単に途上国の経済発展を支援する手段から、人権、労働権、環境、ガバナンスの改善などに積極的に取り組む国に対してより大きな支援を行う枠組みに変化している。新制度では最も支援を必要とする国が最大の恩恵を受けられるよう、受益国が大幅に絞り込まれる。

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現行のGSP規則では176の受益国が指定されており、EUは武器を除く幅広い物品を対象に関税を免除または軽減している。新制度では対象国が89カ国に絞り込まれ、最も開発が遅れている後発開発途上国(LDC)により重点的に支援が行われることになる。89カ国のうちLDCが49カ国を占め、内訳はアフリカ33カ国、アジア10カ国(アフガニスタン、バングラデシュ、カンボジア、ミャンマー、ネパールなど)、太平洋地域5カ国、カリブ海地域1カ国(ハイチ)となっている。これらLDCからの輸入品に対しては、武器を除くすべての物品について関税の完全停止(関税率0%)が適用される。

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残る40カ国は1人当たりの国民総所得(GNI)を基にした世界銀行の分類で、低所得国および下位中所得国にあたる国々で、中国、インド、インドネシア、タイ、フィリピン、ベトナム、ウクライナ、イラン、イラクなどが含まれている。これらの国々からの輸入品に対しては、品目によって関税が免除または軽減される。

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一方、現在制度の受益国のうち、過去3年間に連続して世界銀行から高所得国または上位中所得国に分類された国は、GSPの対象から除外される。具体的には高所得国の8カ国・地域(サウジアラビア、バーレーン、クウェート、カタール、アラブ首長国連邦、オマーン、ブルネイ、マカオ)と、上位中所得国12カ国(マレーシア、ロシア、カザフスタン、ブラジル、アルゼンチン、ベネズエラ、キューバなど)がこれに該当する。このほか、EUとの間で何らかの特恵貿易協定を結んでいる国・地域も14年以降はGSPの対象から除外される。

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