2012/12/3

産業・貿易

銀行業界が「バーゼルIII」導入延期要請、先行導入による競争力低下を懸念

この記事の要約

金融危機の再発防止を目的とする国際的な銀行資本規制「バーゼルIII」をめぐり、EU内の銀行が加盟する主要団体から相次いで適用の延期を求める声が上がっている。欧州銀行連盟(EBF)は11月21日、バーゼルIIIに基づく新た […]

金融危機の再発防止を目的とする国際的な銀行資本規制「バーゼルIII」をめぐり、EU内の銀行が加盟する主要団体から相次いで適用の延期を求める声が上がっている。欧州銀行連盟(EBF)は11月21日、バーゼルIIIに基づく新たな規制の導入を1年延期して2014年1月とするよう求める書簡を欧州委員会に送付。26日にはドイツ銀行連盟(BdB)のトップも欧州委に対し、新規制の適用を14年に先送りするよう求めたことを明らかにした。米金融当局は11月初め、法整備の遅れを理由に予定された13年1月からの適用開始を先送りする方針を打ち出しており、EBFとBdBは、EUが米国に先立って新規制を導入すれば、域内の銀行が競争で不利な立場に置かれると警告している。

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バーゼルIIIは国際的に業務展開する銀行に対し、普通株と内部留保で構成する狭義の中核的自己資本(コアTier1)比率を2019年までに7%まで引き上げることを求めている。EU加盟国はこれまでに◇域内の全銀行を対象に、コアTier1比率を現在の2%から15年までに4.5%に引き上げ、19年には7%の達成を義務づける◇各国の金融当局がそれぞれの権限で、自国の銀行に対して最大3%の資本の上積み(資本バッファー)を課すことができる仕組みを導入する―― などで合意している。しかし、世界の金融センターとしてのポジションを堅持したい英国は、各国当局が独自の判断でEU基準より高い自己資本比率を設定できるようにすべきだと主張しており、裁量権の範囲をめぐって最終的な調整が難航している。域内銀行の業界団体が正式に新ルール導入の延期を要請してきたことで、欧州委はさらに難しい舵取りを迫られそうだ。

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EBFのクラウセン会長は欧州委のバルニエ委員(域内市場・金融サービス担当)に宛てた書簡で、予定通りに1月から新規制が導入された場合、域内の銀行は資本要件や流動性バッファーをはじめとする新ルールへの対応を迫られる一方、米国のライバルは当面、こうした厳しい規制の適用を免れることになると指摘。「米当局の決定により、域内銀行の国際競争力が著しく低下する事態を憂慮している」と強調した。

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一方、BdBのシュミッツ会長は、米側が具体的な導入時期を明言していない段階で、EUが新ルールの適用を開始することは、域内の銀行にとって競争上不利になると指摘。「バーゼルIIIの導入時期については可能な限り米国と調和させるべきで、2014年以前に適用を開始すべきではない」と明言した。

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欧州委の報道官はEBFからの書簡を受け、「数週間以内に米当局と協議を行い、EU・米間で共通のアプローチを探る」としたうえで、「重要なことは、13年の導入に向けて加盟国および欧州議会との交渉をまとめることだ」と強調。導入延期には否定的な見解を示している。

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