2012/12/10

環境・通信・その他

航空管制一元化計画に遅れ、欧州委が法的手続きへ

この記事の要約

欧州委員会は4日、EU域内における航空管制システムの一元化を目指した「単一欧州空域」構想に基づく管制空域の再編計画が同日の期限までに実現できなかったことを受け、履行義務を果たしていない加盟国に対して近く法的手続きに入る方 […]

欧州委員会は4日、EU域内における航空管制システムの一元化を目指した「単一欧州空域」構想に基づく管制空域の再編計画が同日の期限までに実現できなかったことを受け、履行義務を果たしていない加盟国に対して近く法的手続きに入る方針を明らかにした。欧州委は対象となる国の具体名を公表していないが、来年早々にも加盟国の大半に正式な警告書が送付されるものとみられる。欧州委はまた、単一欧州空域の早期実現に向けて改革を加速させるため、来春をめどに新たな法的枠組みを提示する方針を示している。

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欧州では国ごとに細分化された航空交通管制に従って飛行ルートが設定されているため、EU域内を結ぶ路線の飛行距離は最短ルートに比べて平均42キロ長く、遅延や燃料代の増大などを招いている。EU加盟国は09年に採択した単一欧州空域の実現のための法的枠組み「Single European Sky Ⅱ」に基づき、域内27カ国とノルウェー、スイス、ボスニア・ヘルツェゴビナ、クロアチアの計31カ国に拠点を置く60の航空管制センターが管轄する650の空域を9つの「機能的空域ブロック(Functional Airspace Blocks=FAB)」に再編することで合意。その期限が12月4日だった。しかし、実際には依然として多くの国で管制業務の独占体制が維持されており、欧州委は昨年10月の時点で、目標達成に向けて計画を実行している国はベルギー、オランダ、ルクセンブルク、デンマーク、リトアニアの5カ国にとどまると警告していた。

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欧州委の試算によると、域内の航空管制システムが統合されて最短ルートでの飛行が実現した場合、輸送能力は現在の3倍に拡大する一方、年間50億ユーロ(現在のコスト水準の約50%に相当)の経費節減と二酸化炭素(CO2)排出量の10%削減が可能とされる。欧州委のカラス副委員長(運輸担当)は声明で「EU市民と企業は日々、非効率な航空管制による空の渋滞と遅延の代償を払わされている。EUは単一欧州空域を実現するための土台となる9つの機能的空域ブロックを期限までに形成することができなかった。景気低迷が続く中で現状のままとどまることは許されない。EU法を厳格に適用して管制空域の再編を推進する以外に選択肢はない」と強調した。

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