2012/12/17

産業・貿易

欧州議会が単一特許制度に関する法案可決、40年越しの構想が実現へ

この記事の要約

欧州議会は11日の本会議で、欧州単一特許の創設と特許訴訟制度の一元化に関する法的枠組みについて審議を行い、単一特許規則、単一特許の翻訳言語規則、統一特許裁判所協定から成るパッケージを賛成多数で可決した。EU加盟国は10日 […]

欧州議会は11日の本会議で、欧州単一特許の創設と特許訴訟制度の一元化に関する法的枠組みについて審議を行い、単一特許規則、単一特許の翻訳言語規則、統一特許裁判所協定から成るパッケージを賛成多数で可決した。EU加盟国は10日の競争担当相理事会で一連の法案を承認しており、正式な手続きを経て2014年1月にも単一特許制度が導入される見通しだ。

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現在EUで特許を取得する仕組みとしては、各国で出願して個別に審査を受ける方法と、欧州特許庁(EPO)に出願して「欧州特許」を取得する方法があるが、欧州特許も最終的な認可権限は各国の特許庁が握っているため、出願人は特許を取得したい国の制度に合わせてそれぞれ書類を用意しなければならず、翻訳などの費用が企業にとって大きな負担になっている。このためEUでは40年近く前から域内共通の特許制度を創設する構想について議論が続いていたが、加盟国は昨年3月、使用言語をめぐって同構想に反対するイタリアとスペインを除いた25カ国で、EU共通特許を先行導入することを正式に決めた。

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新システムでは英語、フランス語、ドイツ語のうちいずれか1つの言語で出願すれば済むため手続きが大幅に簡素化され、EPOが認定すればスキームに参加するすべてのEU加盟国で同じ効力を持つ特許を取得することができる。欧州委員会は新制度の導入により、翻訳や各国での手続きなどにかかる費用が現在のおよそ7分の1の5,000ユーロ程度で済むと試算している。

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一方、単一特許制度をめぐる議論では、特許関連の紛争を一括処理する統一された訴訟制度の創設がもう1つの焦点となっていたが、統一特許裁判所をどこに置くかをめぐって英国、フランス、ドイツなどが対立。最終的に加盟国は今年6月、裁判所の本部機能をパリに置き、特定分野の事案を扱う専門機関をロンドンとミュンヘンに設置することで合意した。統一特許裁判所では単一特許に加え、従来型の欧州特許に関する事案も取り扱う。なお、統一特許裁判所協定の発効には、単一特許制度に参加する25カ国のうち英国、フランス、ドイツを含む過半数(13カ国以上)の批准が必要。残る2つの規則は統一特許裁判所協定と同時に発効する。

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現時点で単一特許制度に参加していないイタリアとスペインは、今後いつでもスキームに参加することができる。両国は単一特許の使用言語から自国言語が除外されることに強く反発し、翻訳言語規則はEU条約に違反するとして11年5月にEU司法裁判所に提訴した。司法裁の法務官は11日、イタリアとスペインの訴えを棄却する方針を表明したが、最終的に両国の主張を認める判決が下された場合は同規則が無効となり、翻訳言語に関する議論が振り出しに戻る可能性もある。

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欧州委のバルニエ委員(域内市場・サービス担当)は声明で、11年に米国では22万4,000件、中国では17万2,000件の特許が認定されたのに対し、欧州では6万2,000件にとどまったと指摘。単一特許制度の導入によってイノベーションを保護するためのコストが大幅に圧縮され、特に研究機関や中小企業にとって大きなメリットになると強調している。

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