2012/12/17

産業・貿易

「バーゼルIII」導入延期で基本合意、賞与規制でも妥協成立

この記事の要約

EU加盟国と欧州議会の代表は13日、新たな銀行資本規制「バーゼルIII」の適用を1年遅らせて2014年1月からとすることや、報酬規制を強化することで基本合意した。ただ、バーゼルIIIに基づく新規制全般についてはいつくかの […]

EU加盟国と欧州議会の代表は13日、新たな銀行資本規制「バーゼルIII」の適用を1年遅らせて2014年1月からとすることや、報酬規制を強化することで基本合意した。ただ、バーゼルIIIに基づく新規制全般についてはいつくかの争点が残っているため、欧州議会の報道官は18日に改めて協議を行い、最終合意を目指すと説明している。

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金融危機の再発防止を目的とするバーゼルIIIは、国際的に業務展開する銀行に対し、普通株と内部留保で構成する狭義の中核的自己資本(コアTier1)比率を2019年までに7%まで引き上げることを求めている。主要国は2013年1月から段階的に新規制を導入することで合意しているが、米金融当局は11月初め、法整備の遅れを理由に適用開始を先送りする方針を発表。欧州銀行連盟(EBF)やドイツ銀行連盟(BdB)はこれを受け、EUが米国に先立って新規制を導入すれば、域内の銀行が競争で不利な立場に置かれるなどと主張し、新規制の導入を延期すべきだとの見解を相次いで表明していた。

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一方、報酬規制をめぐっては、短期の業績に連動した高額報酬制度がトレーダーなどのリスク行動を助長して、金融危機が拡大する要因になったとの反省に立ち、EUは昨年1月、各行が現金で即時支給する賞与(ボーナス)の割合を最大30%(高額賞与の場合は20%)に制限することなどを柱とする規制を導入した。しかし、固定給とボーナスの比率に関しては、EU共通の上限を設ける案が見送られ、現在は各行が独自に賞与の上限を設定することになっている。この点をめぐり、固定給を超えるボーナスの支給禁止を求める欧州議会と、国際競争力の観点から厳格な規制に難色を示す加盟国の間で調整が難航していたが、欧州議会は今回、原則として賞与の上限を固定給と同額に制限するものの、株主の承認があれば固定給の最大2倍まで支給を認めるとの譲歩案で合意した。

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今回の協議では、EU議長国キプロスの主導で暫定合意に達したものの、英国は人材流出などへの懸念から厳格な報酬規制に強く反発しており、次回会合で最終的に合意できるかどうかは不透明だ。また、アナリストらの間では、固定給とボーナスの比率に上限が設けられた場合、銀行は業績と関係なく固定給を引き上げようとするため、かえって逆効果になるといった意見も出ている。

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