2013/1/28

産業・貿易

欧州議会農業委、CAP改革案を承認

この記事の要約

欧州議会の農業・農村開発委員会は24日、2014-20年を対象期間とする次期EU共通農業政策(CAP)の改革案を賛成多数で承認した。CAP予算の約7割を占める直接支払い(所得補償)の抜本的な見直しが改革案の眼目で、補助金 […]

欧州議会の農業・農村開発委員会は24日、2014-20年を対象期間とする次期EU共通農業政策(CAP)の改革案を賛成多数で承認した。CAP予算の約7割を占める直接支払い(所得補償)の抜本的な見直しが改革案の眼目で、補助金の受給額に一律の上限を設けることや、直接支払い予算の30%を環境保全や気候変動への取り組みに対して支払われる「緑化に係る補助金」に充てることなどを盛り込んだ内容になっている。EU加盟国は2月7-8日の首脳会議で14-20年の中期予算に関する協議を再開することになっており、そこで次期CAP予算が承認される見通し。欧州議会はこれを受け、3月または4月の本会議でCAP改革案について採決を行う方針を示している。

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CAPはEU予算の約4割を占める最大の支出項目で、農業者の所得を保証するための価格・所得政策などにこれまで年間およそ600億ユーロが投じられてきた。巨額の財政赤字を抱える加盟国にとって農業分野への支出は大きな負担になっており、英国などは次期CAP予算を大幅に削減すべきだと主張していたが、農業大国のフランスやスペインなどが強く反発。最終的にはより公平な補助金支給などを条件に、20年まで年間550億ユーロ規模の予算水準を維持することで合意が成立し、これを受けて欧州委員会が次期CAP改革案を策定した。

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まず農家への直接支払いに関しては、受給額に年間30万ユーロの上限が設けられ、年間15万ユーロ以上の補助金はすべて課税対象となる。一方、気候変動への対応や環境保全につながる農法などに対する補助金(緑化支払い)は別枠で支給され、課税対象からも除外される。具体的には作物多様化、永年牧草地や生態系の維持を目的とする休閑地の維持・管理などが支給対象となる。欧州の原案では、永年草地を除く耕地面積の7%以上を休耕地や植林地などの「環境用地」として確保することが緑化支払いの条件の1つとなっていたが、欧州議会農業委ではこれを大幅に緩和して初年度の14年は3%とし、16年に5%まで引き上げる案が承認された。このほか直接支払いの対象は「実際に活動している農業者」に限られ、たとえばゴルフ場や飛行場の所有者などは除外される。

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一方、欧州委によると、イタリアやギリシャでは1ヘクタール当たりの直接支払いが平均400ユーロに上るのに対し、ラトビアでは100ユーロに満たない。こうした加盟国間の格差を是正するため、欧州委は支払い水準が低い国を対象に段階的に支給額を引き上げ、20年までに対象農家の少なくとも90%がEU平均(現時点では約270ユーロ)の支給額を受け取れる体制にする目標を打ち出した。しかし、農業委ではこの割合を65%とする修正案が承認された。

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欧州委はこのほか、すでに廃止が決まっている牛乳とワインに加え、砂糖についても15年9月末までに生産調整を廃止する方針を打ち出していたが、生産調整が廃止されれば価格下落による収益性の低下でテンサイの生産量が落ち込み、安定供給が困難になるとして生産者団体などが強く抗議。農業委では20年まで現行制度を維持する案が承認された。

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