2013/2/4

産業・貿易

鉄道自由化包括法案を発表、国内旅客輸送の自由化など

この記事の要約

欧州委員会は1月30日、域内鉄道市場の完全自由化に向けた包括法案(第4次鉄道パッケージ)を発表した。2019年末までに国内旅客輸送サービスを開放して他国の事業者が参入できるようにすることや、鉄道網管理と鉄道運営の両方を手 […]

欧州委員会は1月30日、域内鉄道市場の完全自由化に向けた包括法案(第4次鉄道パッケージ)を発表した。2019年末までに国内旅客輸送サービスを開放して他国の事業者が参入できるようにすることや、鉄道網管理と鉄道運営の両方を手がける統合型の大手鉄道会社に対し、インフラ部門と輸送部門の実質的な分離を義務づけることなどを柱とする内容。今後、欧州議会とEU閣僚理事会で法案について審議する。

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EUは2001 年以降、貨物輸送を先行させる形で段階的に鉄道輸送の市場開放を進めてきた。10年には国際旅客サービスを自由化し、域内の主要都市を結ぶ高速鉄道に各国の鉄道会社が相互参入できるようになった。しかし、強力な国鉄労組を抱えるフランスやベルギーなどに加え、自国企業の競争力低下を懸念する中・東欧諸国で自由化反対論が根強く、欧州委はかつて「最後の聖域」となっている国内旅客サービスを17年までに開放する方針を打ち出したものの、加盟国の反対で頓挫した経緯がある。

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欧州委によると、現時点で国内旅客輸送サービスが完全自由化されている市場はスウェーデンと英国のみで、一部自由化されている市場もドイツ、オーストリア、イタリア、チェコ、オランダの5カ国にとどまっている。同委の提案が通り19年末までに域内全体で完全自由化が実現した場合、相互参入による競争促進とサービス向上で10年間に最大50%の利用者増加が見込まれ、35年までに400億ユーロ以上の経済効果が生まれると試算している。

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一方、欧州委は鉄道市場で競争を促進するには自由化を進めるだけでなく、統合型鉄道会社のインフラ事業と輸送事業を分離する必要があると指摘している。具体的には鉄道網管理会社と複数の鉄道運営会社を傘下に置く持ち株会社を新たに設立することは禁止され、既存の持ち株会社は◇インフラ部門と輸送部門の意思決定機関を完全に分離する◇部門間の資金の流れを遮断する◇ITシステムを分離して部門間の情報漏洩を防ぐ――などの措置を講じることが義務づけられる。

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欧州委のカラス副委員長(運輸担当)は当初、ドイツ鉄道(DB)やフランス国鉄(SNCF)のような大手鉄道会社に対してインフラ部門と輸送部門の完全分離(アンバンドリング)を義務づける方針を示していたが、独仏の強い反対でルールが緩和された。その代わり、法案にはいわゆる「報復条項」が盛り込まれており、統合型の大手鉄道会社が公正な競争を確保するための十分な措置を講じていないと欧州委が判断した場合、他のEU諸国は当該企業の自国への参入を阻止することができる。

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欧州委はこのほか、現在は国ごとに異なる車両の認証制度や安全基準を域内で統一し、欧州鉄道庁が認可手続きを一括して行うことを提案している。同措置により、車両が認可されるまでにかかる期間とコストは現在よりそれぞれ20%短縮され、鉄道会社にとっては25年までに5億ユーロの経費節減になるとみられている。

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