2013/2/11

産業・貿易

REACHの抜本見直しは「不要」、中小企業の登録料引き下げへ

この記事の要約

欧州委員会は5日、EUの化学物質規制「REACH」が施行された2007年6月以降、欧州市場では化学品の使用に関して安全性が大幅に向上しており、当面は抜本的な規制の見直しは不要とする報告書をまとめた。ただ、報告書は中小企業 […]

欧州委員会は5日、EUの化学物質規制「REACH」が施行された2007年6月以降、欧州市場では化学品の使用に関して安全性が大幅に向上しており、当面は抜本的な規制の見直しは不要とする報告書をまとめた。ただ、報告書は中小企業にとってREACHがコスト面で大きな負担になっていると指摘しており、欧州委は近く中小企業への支援策として、欧州化学物質庁(ECHA)に支払う登録料の引き下げを提案する方針を示している。

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REACHは使用化学物質の安全性評価から登録、認可までの全プロセスをカバーする単一の規制システムで、従来は各国当局が行っていたリスク評価を事業者に義務付けている点が最大の特徴。洗剤、溶剤、繊維など幅広い製品に含まれるおよそ3万種の化学物質が規制の対象となり、年間1トン以上を製造または輸入する事業者はそれぞれの物質について安全性を評価したうえで、ECHAに各物質の使用状況などを登録しなければならない。発がん性・変異原性・生殖毒性の高い物質(CMR)、残留性・蓄積性・毒性を有する物質(PBT)、残留性および蓄積性が極めて高い物質(vPvB)は高懸念物質に分類され、これらの物質の使用または販売には当局の認可が必要となる。

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報告書によると、REACHの導入以来、域内で製造または販売されている7,884種の化学物質がECHAに登録されており、認可対象となっている化学物質については人や環境への影響が小さい代替物の開発が本格化している。また、安全性評価のための動物実験を減らす取り組みも広がっており、欧州委が総額3億3,000万ユーロの研究費を投じた成果が表れ始めている。さらにEU市民を対象とした意識調査「EUバロメータ」では、回答者の61%が「10年前に比べて化学製品が安全になったと感じている」と答えている。

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報告書は「REACHは概ね円滑に実施されており、現時点で抜本的な改革は必要ない」と結論づけたうえで、より効率的な運用のため◇中小企業のコスト負担を軽減して、すべての企業がREACHの定めるルールを遵守できるようにする◇安全データシートの効率的な利用を推進する◇登録・認可申請手続きを簡素化する――などを提言している。

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