2013/2/18

環境・通信・その他

ネット個人情報保護規制、域外企業も対象に=欧州委

この記事の要約

欧州委員会のレディング副委員長(司法担当)は11日、欧州電気通信事業者協会(ETNO)のガンバルデッラ会長と会談し、欧州委が昨年1月にまとめたインターネット上の個人情報保護を強化するための包括的な規則案について協議を行っ […]

欧州委員会のレディング副委員長(司法担当)は11日、欧州電気通信事業者協会(ETNO)のガンバルデッラ会長と会談し、欧州委が昨年1月にまとめたインターネット上の個人情報保護を強化するための包括的な規則案について協議を行った。両者は新たな規制によってEU企業が競争で不利な立場に置かれることのないよう、米国など第3国の企業を含め、域内で活動するすべての事業者に規制を適用すべきだとの見解で一致。改正案を審議している欧州議会と閣僚理事会に対し、公正な競争を促進する、一貫性のある規制の導入を求めた。

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欧州委が策定した「データ保護規制(案)」は、1995年に採択された「データ保護指令」の改訂版となるもので、オンラインサービスの利用者がネット事業者に自分に関するデータの削除を要求できる「忘れられる権利」や、違反企業に対する罰則規定などを盛り込んだ内容。ソーシャル・ネットワーキング・サイト(SNS)などで公開された個人を特定するデータが本人の意思で削除できないケースや、ネット関連企業が利用者のオンライン行動に関する記録を利用して広告を配信する「行動ターゲティング広告」の広がりなどを背景に、常に膨大な量のデータが世界中でやり取りされる中で個人情報保護を強化するのが狙いだ。

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新規制の柱となる「忘れられる権利」は、ネット上で公開された名前や写真、クレジットカードなどの情報について、本人がいつでも事業者に削除を要求できるという内容。SNSなどの事業者は正当な理由がない限り、サーバーから利用者に関するあらゆる情報を削除しなければならない。このほか事業者は◇個人情報の取り扱いについて予め利用者から明確な同意を得る◇利用者がいつでも容易に自分の情報にアクセスできるようにする◇利用者がプロバイダーを変更する際、個人情報を簡単に移動できるようにする◇セキュリティ上の問題が生じた場合、速やかに(可能であれば24時間以内に)拠点を置く国のデータ保護当局に報告する――などが義務づけられる。

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新規制は域外の事業者にも適用されるため、違反した場合は最大で100万ユーロ、または総売上高の2%に相当する制裁金を科されることになる。米国の有力業界団体は「企業は過度の負担を強いられることになり、イノベーションが阻害されて雇用の喪失を招く」などと主張し、規制案を阻止するよう欧州議会への働きかけを強めている。米政府も規制緩和を求めてEUへの圧力を強めており、EU・米間の新たな火種になる可能性が指摘されている。

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レディング副委員長とガンバルデッラ会長の声明は、こうした米側の動きを牽制する狙いがある。レディング副委員長は「欧州委が提示した規則案は公正な競争環境を構築するものだ。域外の企業もEU市場で活動する以上、同一ルールに基づいて同じ水準の個人情報保護を実行しなければならない」と強調。ガンバルデッラ会長も「新規制によって真に公正な競争条件が確保される。分断化された規制や一貫性に欠けるルールの適用を排除することで、デジタル単一市場を実現することができる」と述べた。

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