2013/3/4

環境・通信・その他

希少疾患研究への投資計画発表、26プロジェクトに1.4億ユーロ

この記事の要約

欧州委員会は2月28日、新たな希少疾患対策として26件のプロジェクトに総額1億4,400万ユーロを投じる計画を発表した。欧州を中心に29カ国の300人を超える研究者が関与する重点プロジェクトを資金面で支援し、治療が困難な […]

欧州委員会は2月28日、新たな希少疾患対策として26件のプロジェクトに総額1億4,400万ユーロを投じる計画を発表した。欧州を中心に29カ国の300人を超える研究者が関与する重点プロジェクトを資金面で支援し、治療が困難な希少疾患の原因解明や新規治療法の開発を推進する。

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EUは希少疾患を「2,000人に1人未満の発症率」と定義しており、欧州では推定3,000万人が6,000~8,000の希少疾患に苦しんでいる。希少疾患の発症原因は遺伝子異常がほとんどだが、環境汚染なども要因とされ、子どもが患者の大部分を占める。EUは稀少疾患対策を公衆衛生上の最優先課題と位置付け、稀少疾患に対する認知向上などに取り組んでいるが、患者数が少ないことから研究・開発(R&D)投資の回収が困難で、そのため新たな治療法の開発が思うように進んでいないのが実情。欧州委のゲーガン=クイン委員(研究・イノベーション・科学担当)は「新たな投資プログラムを通じ、日常生活に重大な困難を及ぼす希少疾病に苦しむ患者とその家族を支援することができる」と述べている。

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投資プログラムの対象には◇急性肝不全の新たな治療法として期待されるバイオ人工肝(肝細胞と人工装置を組み合わせたハイブリッド型の人工肝臓)補助装置◇新たな診断ツールを開発するための高度なデータ処理システム◇治療が困難な腎疾患に対する治療効果の測定、疾患の予防、有効な治療法を選択するための指標となるバイオマーカー◇関節炎、心疾患、身体障害などを引き起こすアルカプトン尿症(先天性代謝異常の一種で尿や汗が黒変する遺伝病)の治療薬――などの開発プロジェクトが含まれている。

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対象プロジェクトの多くはEUが中心となって立ち上げた希少疾患分野の研究促進を目的とする実務者レベルのネットワーク「国際希少疾患研究コンソーシアム(IRDiRC)」の重点領域となっており、欧州委は投資プログラムの研究成果がIRDiRCの活動に大きく貢献すると強調している。IRDiRCは2020年までに200の希少疾患に対する新規治療法の確立や、すべての希少疾患に対する診断テストの確立を目指している。

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