2013/4/15

総合 –EUウオッチャー

スペイン・スロベニアは「過度の」経済不均衡、欧州委が対応強化要求

この記事の要約

欧州委員会は10日、EU諸国の経済不均衡に関する報告書を発表した。マクロ経済が不均衡状態にあると認定された13カ国のうち、スペイン、スロベニアについて「過度な不均衡」に陥っていると指摘し、迅速な対応を促している。\ EU […]

欧州委員会は10日、EU諸国の経済不均衡に関する報告書を発表した。マクロ経済が不均衡状態にあると認定された13カ国のうち、スペイン、スロベニアについて「過度な不均衡」に陥っていると指摘し、迅速な対応を促している。

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EUは財政規律を定めた安定成長協定を通じて、加盟国の財政状況をチェックしているが、ギリシャに端を発した債務危機には、財政赤字だけでなく経済の構造的問題も要因となっているとの反省を踏まえ、2011末の安定成長協定改定に、マクロ経済面での不均衡も監視・制裁対象とすることを盛り込んだ。「警戒メカニズム・リポート」と呼ばれる報告書を欧州委が定期的にまとめ、対象国に是正を促す仕組みとなっている。具体的には経常収支、競争力、民間債務、住宅価格など11項目の指標を組み合わせた「スコアボード」をまとめ、これに基づいて不均衡があると認定した国が対象となる。

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今回の報告書で対象となったのは、スペイン、スロベニア、フランス、イタリア、英国、オランダ、ベルギー、デンマーク、スウェーデン、フィンランド、ハンガリー、ブルガリア、マルタの13カ国。

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「過度な不均衡」が指摘された2カ国のうちスペインは、不動産バブル崩壊による金融システムの混乱、債務危機に直面しており、すでにユーロ圏の金融安全網「欧州安定メカニズム(ESM)」から銀行救済の金融支援を受けている。実体経済もマイナス成長が続き、失業率は26%を超える。

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スペイン政府は金融安定、財政再建などに取り組んでいるものの、欧州委は報告書で「巨額の対内・対外債務が経済成長、金融安定を脅かしている」として、不均衡改善に向けた強力な政策的措置の導入が必要と指摘。国内銀行の資本増強に対する公的支援の継続も求めた。

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スロベニアは公的累積債務が国内総生産(GDP)比48%と、安定成長協定で上限となっている60%を下回っている。しかし、不動産バブル崩壊による銀行の不良債権増大で金融システムが混乱しており、民間債務も膨らんでいることから、市場ではEUへの金融支援要請を迫られるとの観測が急浮上している。欧州委は同国がマイナス成長を続けていることから財政、金融不安、民間債務の悪化が加速する恐れがあるとして、過度な不均衡状態にあると認定。スペインと同じく迅速な対応を促した。

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一方、残る11カ国については「過度な」不均衡にはないとしながらも、フランスに関しては輸出、競争力、財政の面で不安が大きいとして、「断固とした政策措置」の導入が必要と指摘した。

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昨年11月に発表された報告書ではキプロスも要監視国に指定されていたが、EUと国際通貨基金(IMF)による金融支援が決まり、その条件となる大手銀行の整理などに着手していることから、今回の報告書では対象外となった。また、ギリシャ、アイルランド、ポルトガルに関しても、EUとIMFによる金融支援実施に伴い、別枠で財政が監視下に置かれているため、対象となっていない。

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