2013/4/22

総合 –EUウオッチャー

セルビアがコソボと関係正常化で合意、6月にEU加盟交渉開始決定へ

この記事の要約

セルビアとコソボは19日、ブリュッセルのEU本部で行われた首脳協議で、関係正常化について合意した。コソボのセルビア系地域に限定的な自治を認めるという内容。これによって双方はEU加盟に向けた大きな障害が取り除かれ、セルビア […]

セルビアとコソボは19日、ブリュッセルのEU本部で行われた首脳協議で、関係正常化について合意した。コソボのセルビア系地域に限定的な自治を認めるという内容。これによって双方はEU加盟に向けた大きな障害が取り除かれ、セルビアは6月に加盟交渉開始が決まる見通しだ。

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コソボは2008年、セルビアからの独立を一方的に宣言。EU25カ国、日米を含む90カ国以上から独立を承認された。しかし、セルビアは国家承認を拒んでおり、EUから関係正常化を加盟交渉開始の条件として突きつけられてきた。

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EUの仲介で昨年10月に開始されたセルビアとコソボの関係正常化に向けた協議の焦点は、セルビア系住民が実効支配するコソボ北部地域の扱い。セルビアはコソボを正式な国家としては承認しないものの、セルビア系住民の自治権が認められれば同地域に対するコソボの主権を容認する方向で交渉を進めた。しかし、自治の程度をめぐるコソボとの対立が解けず、3日に行われた最後の協議は物別れに終わっていた。

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EUのアシュトン外交安全保障上級代表の呼びかけで17日に急きょ再開された協議も難航したが、EU加盟交渉の早期開始を優先するセルビアのダチッチ首相と、最大の懸案である対セルビア問題を解決したいコソボのサチ首相が歩み寄り、19日に関係正常化の合意文書に調印した。

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合意の詳細は公表されていないが、コソボのセルビア系地域に警察、司法、教育、医療の分野で一定の自治権が与えられる代わりに、セルビアはコソボの領土の5分の1に当たる同地域がコソボの「法的枠組み」に組み込まれることを認めるという内容。コソボの日刊紙「エクスプレス」によると、最大の焦点だった警察、司法制度に関しては、コソボ政府の主権下に置かれるが、警察署長、判事はセルビア系住民が任命できる。また、セルビアはコソボを引き続き国家として承認せず、国連など国際機関への加盟に拒否権を発動する権利を有するが、コソボのEU加盟については認める。同合意は双方の国内での承認手続きを経て発効となる。

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協議の仲介役となったアシュトン外交安全保障上級代表は、1999年のコソボ紛争から14年続いたセルビアとコソボの対立に終止符を打つ今回の歴史的合意を「双方は過去と決別し、欧州への一歩近づいた」と歓迎。ダチッチ首相は「過去の傷が癒された。新時代の幕開けだ」と成果を強調した。

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コソボ北部のセルビア系保守勢力は、自治権が限定される今回の合意に反発し、住民投票で是非を問う構えを示しており、関係正常化が実際に進むかどうか不安が残る。それでも、政府間で合意に至ったことで、EUは22日の外相理事会で加盟国にセルビアとの加盟交渉開始を勧告する予定。順調に行けば6月の首脳会議で加盟交渉開始が正式決定される。

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一方、コソボもセルビアとの合意により、EU加盟の前段階となる「安定化・連合協定(SAA)」の締結に向けた交渉の開始を同首脳会議で認められる見通しだ。ただ、EUではスペイン、ギリシャ、ルーマニア、スロバキア、キプロスの5カ国が、コソボ独立を認めると国内の分離独立問題に飛び火する恐れがあることからコソボを国家承認しておらず、加盟への道のりは険しそうだ。

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