2013/4/15

産業・貿易

脱税防止で預金者情報共有へ、オーストリアに守秘義務緩和の圧力

この記事の要約

EU加盟国は13日の財務相理事会で脱税防止策について協議し、独仏英など9カ国が国外の銀行口座を利用した租税回避を阻止するため、自動的情報交換システムを導入することで合意した。これは世界的にタックスヘイブン(租税回避地)へ […]

EU加盟国は13日の財務相理事会で脱税防止策について協議し、独仏英など9カ国が国外の銀行口座を利用した租税回避を阻止するため、自動的情報交換システムを導入することで合意した。これは世界的にタックスヘイブン(租税回避地)への風当たりが強まるなか、批判の的になっている銀行の守秘義務制度を堅持している域内国に圧力をかけるのが狙い。ルクセンブルクは先週、2015年から国外在住の預金者に関する情報をEU諸国と共有する方針を打ち出したが、オーストリアは銀行守秘義務を堅持する考えを示しており、今後は独仏英などが中心となって同国に方針転換を迫るものとみられる。

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預金者情報の自動交換システムは、12日に独仏英にイタリア、スペイン、ポーランドを加えた6カ国の間で合意が成立。脱税防止や資金洗浄(マネーロンダリング)の根絶に向けた取り組みの一環として財務相理で提案され、ベルギー、オランダ、ルーマニアが支持を表明した。加盟国は今月18-19日に米ワシントンで開催される20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で、銀行の透明性向上について協議することで合意している。

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銀行守秘義務は非居住者の利子課税ルールに絡んで条件付きで認められている制度で、域内ではルクセンブルクとオーストリアのみが同制度を維持している。両国に批判の矛先が向けられた直接のきっかけは、フランスのカユザック前予算担当相が脱税疑惑で辞任に追い込まれたスキャンダル。同氏は疑惑が浮上した昨年12月以来、一貫して身の潔白を主張していたが、今月に入り税金逃れのためスイスに隠し口座を持っていたことを認め、捜査当局に刑事訴追された。これを受けてオランド大統領は10日、国内の銀行に対し、世界各地に保有する子会社のリストと活動報告の公表を義務づけることなどを盛り込んだ脱税防止策を発表。同大統領は今後、規制対象をEU域内の銀行と大企業に拡大したい考えを示している。一方、米国の国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)は今月初め、世界各地のタックスヘイブンを舞台とした大物政治家などによる資産隠しの実態を公表。租税回避地の根絶に向け、銀行守秘義務の廃止を求める声が一気に高まった。

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こうしたなか、ルクセンブルクのユンケル首相は10日、2015年1月から銀行守秘義務を大幅に緩和し、国内の銀行に口座を保有する外国人預金者について、利子払いに関する情報などを関係国と自動的に交換するシステムを導入する方針を打ち出した。同国やオーストリアではこれまで、脱税など違法行為の証拠がある場合に限り、関係国の求めに応じて情報を提供してきたが、15年以降は個別の要請を待たずに金融資産の出入りなどの情報を自動的かつ継続的に関係国と共有する。

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一方、オーストリアは銀行守秘義務を今後も維持する方針を示している。フェクター財務相はEUの利子課税ルールに基づいて、非居住者の預金口座に関する情報を口座名義人の居住国に通報しない代わりに自国で非居住者の預金利子に課税し、一定額を居住国に還元している点に言及し、「オーストリアはタックスヘイブンではない」と強調。憲法にも明記されている銀行守秘義務を放棄し、預金者の口座情報を自動的に提供することは「プライバシーの侵害にあたる」と反論している。

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ただ、同国のファイマン首相はより柔軟な姿勢を示しており、政権内で意見が分かれている。同首相は地元紙とのインタビューで、脱税防止に向けてより迅速かつ積極的に行動する必要があるとの認識を示し、「銀行守秘義務を維持しながら、外国人預金者に関する情報交換システムに参加したいと考えている」と発言。方法論については「今後の交渉次第だ」と述べている。

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