2013/4/15

産業・貿易

欧州委が反ダンピング・補助金の防衛強化、強制調査で報復回避

この記事の要約

欧州委員会は10日、貿易相手国のダンピング(不当廉売)や補助金から域内企業を保護するための通商防衛強化策を発表した。域内企業が対象国の報復措置を恐れて苦情の申立てを見送るケースが多いことから、企業からの申立てがなくても欧 […]

欧州委員会は10日、貿易相手国のダンピング(不当廉売)や補助金から域内企業を保護するための通商防衛強化策を発表した。域内企業が対象国の報復措置を恐れて苦情の申立てを見送るケースが多いことから、企業からの申立てがなくても欧州委の権限で強制的に調査を実施できるシステムの導入などを提案している。欧州議会とEU閣僚理事会で法案について協議する。

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欧州委は中国の輸出補助金制度などを特に問題視しているが、EU当局者によると、苦情を申し立てた域内企業が同国政府から新たな輸入税を課されたり、投資を妨害されるなどの報復措置を受けるケースが増えているという。欧州委はこうした現状を踏まえ、域内企業が対象国の報復を受けることなく、迅速かつ効率的に相殺関税や反ダンピング関税などの対抗措置を講じることができるよう、各方面から意見募集を行うなどして具体策を検討していた。

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欧州委は職権による強制的な調査のほか、「不公正な補助金で自国の原材料市場に構造的な歪みを生じさせている国」からの輸入品に対して割増関税を課すことを提案している。これは中国によるレアアースの輸出規制に対し、日米欧が世界貿易機関(WTO)に提訴したケースなどを踏まえたもの。EUは通常、「レッサー・デューティー」と呼ばれる原則に沿って、補助金額の範囲内で相殺関税の税率を設定しているが、同ルールは WTO協定上の「努力規定」で義務化はされていないため、今後レアメタルなどについて不公正な通商慣行が認められた場合は、より高い税率を課す方針を示している。

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このほか域内の輸入業者が関税率の変更に柔軟に対応できるよう、暫定的な反ダンピング関税や相殺関税などの措置を発動する場合は、実施の2週間前に事業者に通告することも法案に盛り込んだ。

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欧州委のデフフト委員(通商担当)は法案について「貿易に携わるすべての利害関係者の利益につながるバランスの取れた内容になっている。輸入業者や消費者に悪影響が出ないよう配慮しながら、海外の不公正な通商慣行から域内企業を保護しなければならない」と語った。

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