2013/4/29

環境・通信・その他

航空旅客情報共有システム、欧州議会の司法委が否決

この記事の要約

欧州議会の市民的自由・司法・内政委員会は24日、EU域内の空港を発着する航空便の旅客情報をEU加盟国に提供するよう航空会社に義務づける制度について採決を行い、反対多数(賛成25、反対30)で同構想を否決した。今後、欧州議 […]

欧州議会の市民的自由・司法・内政委員会は24日、EU域内の空港を発着する航空便の旅客情報をEU加盟国に提供するよう航空会社に義務づける制度について採決を行い、反対多数(賛成25、反対30)で同構想を否決した。今後、欧州議会のシュルツ議長と各会派のトップが対応を協議し、廃案にするか修正案を提示するかを決定する。

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航空会社は航空券の予約や搭乗手続きの際に旅客の氏名、住所、電話番号、クレジットカード情報などの個人情報(PNR =Passenger Name Record)を収集しており、米国は2001年9月の同時多発テロ以降、国内を離発着する航空会社にこうしたデータの提供を義務づけている。EUも昨年4月、域内から米国に向かう航空機の旅客情報の利用に関する新たな協定を採択し、7月1日付で新ルールが発効した。しかし、EU各国の当局間で航空旅客の個人情報を共有するシステムは構築されておらず、欧州委員会は2011年2月、テロや国際犯罪の防止・発見・捜査・起訴に役立てる目的で、航空会社にPNRの提供を義務づける制度の導入を提案した。

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市民的自由・司法・内政委では、航空旅客に関する個人情報の提供義務化は「市民の基本的権利を侵害する」といった否定的な意見が多数派を占めた。欧州緑の党の広報担当は「著しくバランスを欠いた提案と言わざるを得ず、憲法上の推定無罪の原則を逸脱しかねない」と指摘した。これに対し、欧州委案を支持した欧州保守改革グループ(ECR)のカークホープ議員は、EUがすでに米国およびカナダとの間で旅客情報の提供に関する協定を締結している事実に触れ、今回の投票結果は「偽善的だ」と非難。「EU間で合意が形成されれば、プライバシー保護に配慮しながらテロや人身売買、麻薬取引などの重大な犯罪に関与した人物を追跡するうえで有効な手段になるはずだった」と述べている。

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EU内では現在、16カ国が航空会社にPNRの提供を義務づけている。欧州委内務総局の報道官は「EU全体で旅客情報を共有することがテロや深刻な越境犯罪と闘ううえで不可欠だと確信している。EUの統一されたアプローチが国ごとに分断された非効率的なシステムの乱立を防ぎ、強固な個人情報保護を実現するための唯一の道だ」と強調している。

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