2013/5/6

環境・通信・その他

英は大気汚染のEU指令に違反、高等法院が環境団体支持の判決

この記事の要約

英高等法院は1日、英政府が大気汚染に関するEU指令を遵守していないとする環境保護団体の主張を認める判断を示した。欧州委員会は加盟国によるEU指令の遵守状況について調査を進めており、今回の動きを受けて同委が英国に対する法的 […]

英高等法院は1日、英政府が大気汚染に関するEU指令を遵守していないとする環境保護団体の主張を認める判断を示した。欧州委員会は加盟国によるEU指令の遵守状況について調査を進めており、今回の動きを受けて同委が英国に対する法的手続きに入る可能性もある。

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EUは2008年に採択された「環境大気質に関する新指令」で、窒素酸化物(NOx)、二酸化硫黄(SO2)、粒子状物質(PM10)、一酸化炭素(CO)など、人体に悪影響をもたらす大気汚染物質の制限値を設定し、各国当局にモニタリングを義務づけている。このうち二酸化窒素(NO2)に関しては、2010年1月が達成期限となっていたが(特別な事情がある場合は5年間の猶予が認められる)、英国では2010年時点で43のモニタリング対象地域のうち、40地域で大気中のNO2濃度が制限値を超えている。環境・食料・農村地域省(Defra)によると、23の地域では15年までに目標達成が可能なものの、マンチェスター、バーミンガム、グラスゴーなど16地域では最大20年まで削減が遅れ、ロンドンに関しては25年以前に規制値を遵守できる見込みはないとしている。

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弁護士などで構成する環境保護団体クライアントアースは11年、加盟国は遅くとも15年までにEUの規制値を遵守する義務があるにもかかわらず、英政府は目標達成に向けて十分な対策を講じていないと主張し、政府を相手取り訴訟を起こした。高等法院は原告側の主張を認め、英政府はEU法の履行義務を果たしていないと指摘。そのうえで、政府に対して具体的にどのような是正措置を命じるべきか、EU司法裁判所に判断を求める方針を明らかにした。

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クライアントアースによると、英国では大気汚染が原因と考えられる疾患で年間2万9,000人が命を落としている。ジェイムズ・ソーントン会長は「今回の歴史的な判決は大気汚染との戦いにおいて重要な転機になるだろう」と述べ、政府に迅速な対応を求めた。

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一方、欧州委のヘノン報道官は今回の事態を受け、司法裁がどのような判断を示すかにかかわらず、欧州委として英政府に対して法的措置を講じることができると強調している。同報道官は「欧州委は現在、複数の加盟国を対象にEU指令の遵守状況を調べており、義務違反と認定されたすべての国に対して統一的な行動をとる方が容易なため、個別に是正措置を命じていないだけだ」と述べている。

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