2013/5/13

環境・通信・その他

EU9カ国が排出枠入札の一部延期を支持、独政権内では意見対立も

この記事の要約

英仏独を含むEU9カ国のエネルギー・環境政策担当相は7日、欧州委員会が提案している排出権価格を下支えするためのテコ入れ策を支持するとの声明を発表した。環境相らは各国政府と欧州議会に対し、「遅くとも7月までにバックローディ […]

英仏独を含むEU9カ国のエネルギー・環境政策担当相は7日、欧州委員会が提案している排出権価格を下支えするためのテコ入れ策を支持するとの声明を発表した。環境相らは各国政府と欧州議会に対し、「遅くとも7月までにバックローディング(排出枠入札の一部延期)の実施で合意するため」、迅速に必要な対策を講じるよう求めている。

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欧州ではユーロ危機に伴う景気低迷で企業の生産活動が停滞し、排出枠に膨大な余剰が生じた結果、排出権価格は今年に入り1トン当たり5ユーロを下回る水準で推移している。欧州委員会は排出枠の需給改善を図るため、EU排出量取引制度(EU-ETS)の第3期間(2013-20年)に有償配分する排出枠について、最初の3年間(13-15年)に割り当てる約35億トンのうち、9億トン分の入札時期を16年以降に先送りする構想を打ち出した。しかし、EU内では「当局の市場介入は排出量取引制度への信頼を損なう」といった声が根強く、欧州議会は4月16日の本会議で同構想を否決。排出権価格は過去最低の1トン当たり2.7ユーロに落ち込んだ。

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欧州委の提案を支持する声明に署名したのは、英仏独のほかデンマーク、フィンランド、オランダ、ポルトガル、スウェーデン、スロベニアの担当閣僚。このうち総選挙を控えたドイツでは、再生可能性エネルギー推進政策に伴う電力料金の高騰に対して国民の不満が高まっており、レースラー経済技術相は排出権価格の上昇によって域内企業に新たな負担を強いるバックローディングに反対を表明。メルケル首相も総選挙前には同構想を支持できないとの立場を示している。このため声明への署名はドイツ政府の立場を代表したものではなく、アルトマイヤー環境相の個人的な考えによるものとの見方も出ている。

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欧州議会本会議での否決を受け、現在は環境委員会で欧州委の提案について再協議が行われている。環境委のグローテ委員長は7日、ツイッターへの投稿で、6月19日に同委で議案の採決を行い、7月の本会議にかける方針を明らかにした。ただ、欧州議員からは当局の介入に対する懐疑論に加え、排出枠の供給を減らして排出権価格が上昇すれば、それだけ域内企業のコスト負担が増し、国際競争力が損なわれるといった意見も出ている。市場関係者の間では、仮にバックローディングが最終的に承認されたとしても、排出権価格はせいぜい1トン当たり6~7ユーロ程度までしか回復せず、企業に環境投資を促すために必要とされる最低ラインの20~25ユーロには遠く及ばないとの見方が有力だ。

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