2013/6/3

産業・貿易

VW法改正めぐる訴訟、欧州裁法務官が独を支持

この記事の要約

ドイツがEU法違反と認定されたフォルクスワーゲン(VW)法の是正を怠っているとして欧州委員会が提訴している問題で、欧州司法裁判所は5月29日、欧州委の訴えを退ける法務官見解を示した。欧州裁は通常、法務官見解に従った判決を […]

ドイツがEU法違反と認定されたフォルクスワーゲン(VW)法の是正を怠っているとして欧州委員会が提訴している問題で、欧州司法裁判所は5月29日、欧州委の訴えを退ける法務官見解を示した。欧州裁は通常、法務官見解に従った判決を下すことから、裁判は欧州委の敗訴となる公算が高い。判決は今秋に下る見通し。

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VW法は独自動車大手のフォルクスワーゲンを外資による買収から保護する目的で1960年に導入された法律で、欧州司法裁は2007年10月、EU法違反を認定した。具体的には(1)各株主の議決権を出資比率に関係なく最大20%に制限する(2)重要決議の阻止に必要な出資比率が20%と、株式会社法に定める25%より低い(3)連邦(国)とニーダーザクセン州はVW株を保有するかぎり、VWの監査役会にそれぞれ2人の役員を派遣できる――という特殊ルールが資本移動の自由を定めたEU法に違反すると言い渡した。

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ドイツ政府はこれを受け、EU法違反が認定された3点のうち、(1)と(3)の規定を廃止する方向で改正VW法案を作成。08年11月の連邦議会(下院)で成立させた。(2)を残したのは、欧州司法裁がEU法違反を認定したのはこれら3ルールをセットで適用することだとの立場をとっているためだ。

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欧州委はこれに対し、3つの規定をすべて廃止することをドイツ政府に求めたが、拒否されたため、12年2月に再提訴。重要決議の阻止に必要な出資比率を20%とするルールを株主の過半数の意思で定めるのであれば問題はないが、法律で制定することは株主の権利を不当に制限するものでEU法違反だと訴えた。

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法務官は今回、ECJが欧州法違反と認定したのは(1)と(2)の規定をセットで適用することだと指摘。現行VW法では(1)の規定が廃止しており、両規定をセットで適用することはできなくなっているとして、ドイツは判決を履行したとの判断を示した。また、ECJが欧州委勝訴を言い渡す場合は、ドイツが支払う制裁額を同委が要求する最低6,300万ユーロから2,000万ユーロ弱に引き下げるよう勧告した。

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現行VW法がEU法に違反しているかどうかについては今回の裁判で判断を下さないとの立場を表明した。このため欧州委は敗訴した場合、改めて提訴し同法がEU法に違反しているかどうかの判断をECJに仰ぐことができる。

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