2013/6/17

環境・通信・その他

「原子力安全指令」改正案発表、6年ごとの相互検査など

この記事の要約

欧州委員会は13日、EU全体で原子力発電所の安全性を高めるための規制強化策を発表した。稼働中のすべての原発を対象に、加盟国に相互検査を義務付けることや、各国の規制当局の独立性強化などを柱とする内容。東京電力福島第1原発事 […]

欧州委員会は13日、EU全体で原子力発電所の安全性を高めるための規制強化策を発表した。稼働中のすべての原発を対象に、加盟国に相互検査を義務付けることや、各国の規制当局の独立性強化などを柱とする内容。東京電力福島第1原発事故を受けて域内の全原発で実施したストレステスト(耐性評価)の結果に基づき、2009年の「原子力安全指令」を改正する。

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欧州委のエッティンガー委員(エネルギー政策担当)は「原発利用に関する決定権は各国政府にあるが、現実に域内で132基の原発が稼働している。すべての原発で最高レベルの安全性を確保することが規則改正の狙いだ」と説明。2014年末までの採択を目指す方針を示した。

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改正案によると、安全性に関する相互検査は各国が専門家を派遣し、特定の項目を選んで6年ごとに実施する。また、加盟国は少なくとも10年ごとに自国の全原発について安全性を点検しなければならず、運転期間を延長する場合は特別検査の実施が義務付けられる。また、各原発施設に事故発生時の拠点となる「緊急対応センター」の設置を求める。

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一方、欧州委は「政治、経済、社会的利害」が原発の安全性より優先されることがあってはならないと強調。規制当局が政府や産業界の介入を受けずに意思決定できるよう、独立性を高めるとともに、十分な予算と人材を確保して運営体制を強化する必要があるとしている。さらに原発運営に関する透明性を高めるため、関連する公的機関に加えて原発事業者にも情報開示を義務付けることや、原発を新設する際、事業者の選定プロセスに市民が関与できる仕組みを導入することなどが改革案に盛り込まれている。

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欧州委によると、EUでは現在14カ国で原発が稼働しており、発電量の約3割を担っている。原発に対するスタンスは国によって大きく異なり、域内で最多の58基が稼働中のフランスは今後も原発を主要なエネルギー源とする方針であるのに対し、ドイツは2022年までにすべての原発を閉鎖する方針を表明している。一方、石炭依存度が高いポーランドなどの東欧諸国や英国、オランダなどでは原発の新設が計画されている。

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