2013/6/17

環境・通信・その他

米政府の個人情報収集にEUが懸念、説明求め専門家会合設置へ

この記事の要約

米国家安全保障局(NSA)がテロ対策の一環として、大手IT企業から広範に市民の通話記録や電子メールなどの情報収集を行っている問題をめぐり、EU内で米国の個人情報保護に対する懸念が強まっている。欧州委員会は近く専門家会合を […]

米国家安全保障局(NSA)がテロ対策の一環として、大手IT企業から広範に市民の通話記録や電子メールなどの情報収集を行っている問題をめぐり、EU内で米国の個人情報保護に対する懸念が強まっている。欧州委員会は近く専門家会合を開き、米側から情報収集の範囲や手法などについて詳しい説明を求める方針。一方、欧州議会では銀行取引データや航空旅客の個人情報の提供に関する米国との協定をめぐり、十分な個人情報保護対策がとられていないとの不満が高まっており、EUデータ保護指令を抜本的に見直すべきだとの声が上がっている。

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欧州委のレディング副委員長(司法・基本権・市民権担当)とマルムストローム委員(内務担当)は14日、アイルランドの首都ダブリンでホルダー米司法長官と会談し、NSAによる個人情報収集について協議した。レディング副委員長によると、米側からは個人情報の収集はテロやサイバー攻撃への関与が疑われる人物を対象に、司法当局や議会の監視下で適切に行われているとの説明があった。しかし、同副委員長は「なお疑問点が残っている」と述べ、EU側としては説明が十分ではないと指摘。近くEU・米双方の専門家による会合を立ち上げ、EU市民のプライバシーが侵害されていないかどうかなどについて、さらに詳しい説明を求めることで米側と合意したことを明らかにした。

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一方、欧州議会では11日にこの問題について審議が行われ、2001年の米同時多発テロを機にEUと米国の間で締結された、テロ資金の根絶を目的とする銀行取引データの提供に関する協定や、EU域内から米国に向かう航空旅客の情報提供に関する協定を問題視する声が上がった。EUデータ保護法の見直しを進めているドイツ選出のアルブレヒト議員は「EUは米国の圧力に屈して銀行取引データや旅客情報などの個人情報を提供してきたが、一般市民に対する広範な監視を受け入れることはできないとの基本姿勢を明確にすべきだ」と強調。域外国とのデータ共有に際してプライバシー保護を徹底するため、インターネットが普及する前の1993年に制定されたEUデータ保護指令を抜本的に見直す必要があると指摘し、7月にも現行指令の改正を求める議案を提出する意向を示している。

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