2013/7/8

総合 –EUウオッチャー

米当局と情報収集問題を協議、FTA交渉と同時並行で

この記事の要約

EU議長国のリトアニアは5日、米当局による盗聴活動に関連して、8日からワシントンで開始する米国との自由貿易協定(FTA)交渉に合わせ、双方の専門家による作業部会を設置すると発表した。EUは米国家安全保障局(NSA)がワシ […]

EU議長国のリトアニアは5日、米当局による盗聴活動に関連して、8日からワシントンで開始する米国との自由貿易協定(FTA)交渉に合わせ、双方の専門家による作業部会を設置すると発表した。EUは米国家安全保障局(NSA)がワシントンのEU代表部なども工作活動の対象にしていたとの疑いを強めており、第1回FTA交渉と並行して情報収集や個人情報保護について米側と協議する。

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テロ対策を目的に、NSAなどが市民の通話記録やインターネット上の情報を収集していた事実が発覚して以来、欧州では主に米大手IT企業のサーバーを通じてメールや写真などの個人情報を収集する「プリズム」と呼ばれるプログラムに対する懸念が広がっている。欧州議会は4日、欧州委員会とEU加盟国に対し、銀行取引データや航空旅客情報の共有に関する米国との協定を一時停止するよう求める決議を賛成多数で採択した。

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テロ資金の根絶を目的とする銀行取引データの提供に関する協定(TFTP)と、EU域内から米国に向かう航空旅客の情報提供に関する協定(PNR)は、共に2001年の米同時多発テロを受けてEUと米国が結んだもの。欧州議会の決議に拘束力はないが、AP通信によると、欧州委のマルムストロム委員(内務担当)は今回の動きを受けてナポリターノ米国土安全保障長官と財務省のコーエン次官(テロ・金融犯罪担当)に書簡を送り、米側から事実関係について十分な説明がない場合、両協定に基づく米国への情報提供を一時停止する可能性を示唆したもようだ。

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一方、FTA交渉との関係では、ドイツなどが盗聴問題とFTAを切り離して協議すべきだとの立場を表明したのに対し、フランスは交渉開始の延期を要求していた。米国との交渉にあたる欧州委は最終的に、FTAの第1回交渉を予定通り開始する一方、双方の当局者による作業部会を立ち上げ、同時並行で情報収集問題について調査を進める方針を固めた。

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