2013/7/8

総合 –EUウオッチャー

EU離脱の国民投票法案、英下院で第一関門を通過

この記事の要約

英下院は5日、EU離脱の是非を問う国民投票の実施に関する法案の採決を行い、賛成304、反対ゼロ(議席数650)で第1読会を通過した。EU離脱に反対する連立与党の自民党(議席数57)と野党・労働党(同258)の議員は大部分 […]

英下院は5日、EU離脱の是非を問う国民投票の実施に関する法案の採決を行い、賛成304、反対ゼロ(議席数650)で第1読会を通過した。EU離脱に反対する連立与党の自民党(議席数57)と野党・労働党(同258)の議員は大部分が投票を棄権した。法案は今後、第2段階の審議に入るが、与党・保守党の議席数は306で過半数(326議席)に達していないため、最終的に法案が成立する可能性は低い。

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英国では伝統的にEU懐疑論が根強く、ユーロ危機が深刻化した2011年以降の世論調査ではEU離脱派が残留派を上回っている。キャメロン首相は今年1月、2015年の次期総選挙で保守党が勝利した場合、EUとの間で英国の加盟条件について再交渉したうえで、17年末までにEU残留の是非を問う国民投票を行うと表明した。しかし、EU離脱を唱える保守党議員は国民投票の実施を法律として明文化するよう要求。連立を組む自民党はEU離脱に反対しているため、保守党のジェイムス・ウォートン議員が議員立法の形で国民投票法案を提出し、キャメロン首相は党として支持する方針を表明していた。

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法案を提出した保守党で最年少のウォートン議員(29)は採決に先立ち、英国民は欧州共同体(EC)残留を決めた1975年の国民投票以来、EUとの関係について意思表示する機会が与えられてこなかったと指摘。「今ここでEUから離脱すべきか、残留すべきかを議論することではなく、国民に発言の機会を与えることが法制化の狙いだ」と強調した。また、ヘイグ外相は「適切な時期に提出された、適切な内容の法案だ」と指摘。そのうえで、国民投票では英国の要求に沿う形で「改革されたEU」に留まる道を選択することが国益に適うとの見解を示し、EU条約の見直しを最優先課題と位置付けるキャメロン首相と同じ考えであることを強調した。

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今回の議員立法について、労働党からは保守党内におけるキャメロン首相の求心力低下の表れとの指摘が出ている。アレクサンダー影の外相は、キャメロン首相が国民投票の実施を表明した背景には「支持基盤が重なる英国独立党(UKIP)の勢力拡大と、党内における指導力の低下という2つの脅威」があると指摘。議員立法は「国民に対する信頼ではなく、キャメロン首相に対する不信感の表れ」と断じ、首相は党内政治に無駄な時間を費やすべきではないと述べた。

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