2013/8/26

総合 –EUウオッチャー

ジブラルタル問題で欧州委が調査団派遣へ、通行税は「違法」の見解

この記事の要約

イベリア半島南端にある英領ジブラルタルの領有をめぐり、英国とスペインが対立している問題で、欧州委員会は19日、国境検問などの実態を把握するため、できるだけ早期に調査団を派遣する方針を明らかにした。欧州委は当初、9月に調査 […]

イベリア半島南端にある英領ジブラルタルの領有をめぐり、英国とスペインが対立している問題で、欧州委員会は19日、国境検問などの実態を把握するため、できるだけ早期に調査団を派遣する方針を明らかにした。欧州委は当初、9月に調査団を派遣する計画だったが、双方が対決姿勢を強めているため、早急に現地の状況を分析したうえで当事国による問題解決を促す。

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欧州委のバローゾ委員長は16日に英キャメロン首相と電話会談したのに続き、19日にはスペインのラホイ首相と電話で善後策を協議。同委員長は声明で、できるだけ早い時期に現地に調査団を派遣する方針を明らかにしたうえで、EUルールに基づいて2国間で問題を解決すべきだとの考えを示した。一方、欧州委のバイイ報道官は同日、スペイン政府が導入を検討している「通行税」について、EU内における国境でのいかなる課税も人の移動などを保障するEUルールに違反するとの見解を示した。

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ジブラルタルは過去300年以上にわたって英国とスペインの摩擦の種だったが、沈静化していた領有権争いが再燃した直接のきっかけは、乱獲防止の名目でジブラルタルの地元政府が7月末、コンクリートブロックを周辺海域に沈めて人工環礁を設置したこと。スペイン側は対抗措置として、麻薬やたばこの密輸防止を口実に国境での検問を強化。英国は「域内での移動の自由を保障したEUルールに違反する」としてスペイン政府の対応を強く批判し、EU司法裁判所への提訴を検討する方針を示している。

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しかし、スペイン政府は「国境監視は権利ではなく義務だ」などと反論し、検問強化を正当化。さらにガルシアマルガジョ外相が今月初め、人工環礁によって漁場から締め出された漁民への補償費用に充てるため、自国とジブラルタルの間を行き来する車両から1台あたり50ユーロの通行税を徴収する方向で検討すると表明したことで、両国間の対立が一気に深まった。ジブラルタル周辺では18日におよそ40隻に上るスペインの漁船が抗議活動を展開したのに続き、19日には英海軍のフリゲート艦「ウェストミンスター」が現地に寄港。英政府はスケジュール通りの行動と説明しているが、スペイン側がさらに反発を強めるのは必至で、紛争解決の糸口は見えていない。

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