2013/10/14

産業・貿易

ロシアが旧ソ連圏諸国に相次ぎ輸入規制、EU接近を牽制

この記事の要約

ロシアの消費者保護当局は7日、リトアニアからの乳製品の輸入を全面的に禁止すると発表した。さらに8日にはグルジア産ワインに対する検査体制を強化する方針を打ち出した。いずれも品質に問題があるとの理由だが、ロシアは夏以降、ウク […]

ロシアの消費者保護当局は7日、リトアニアからの乳製品の輸入を全面的に禁止すると発表した。さらに8日にはグルジア産ワインに対する検査体制を強化する方針を打ち出した。いずれも品質に問題があるとの理由だが、ロシアは夏以降、ウクライナやモルドバからの輸入品に対しても通関検査の強化や禁輸などの措置を講じており、EUへの接近を図る旧ソ連圏諸国を牽制する狙いがあることは明らかだ。

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EUと旧ソ連6カ国(アルメニア、アゼルバイジャン、ベラルーシ、グルジア、モルドバ、ウクライナ)は11月、現EU議長国リトアニアの首都ビリニュスで、幅広い分野での連携強化を目指す「東方パートナーシップ」首脳会議を開くことになっている。ウクライナ政府は先月、EUとの間で貿易、政治、社会、文化、安全保障面の結びつきを強めるための「連合協定」の草案を承認しており、首脳会議で自由貿易協定(FTA)を含む包括的な協定の調印を目指している。また、モルドバとグルジアもEUとの連合協定締結に大きく近づくとみられている。

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一方、ロシアはベラルーシ、カザフスタンと共に「関税同盟」を形成しており、プーチン大統領はウクライナやモルドバなどを取り込んで旧ソ連圏の経済統合を進める構想を打ち出している。ただ、こうした構想に前向きなのはアルメニアやベラルーシなど一部の小国にとどまっており、ロシアは人口4,500万人を擁し、鉄鋼業などが発達した域内第2の大国であるウクライナをなんとかして自陣に取り込もうとしている。プーチン大統領は7月にウクライナを訪問した際、関税同盟への加盟を強く求めたが、同国はこれを拒否。ロシア側はこれを受けて幅広いウクライナ製品を対象に関税手続きを厳格化し、8月中旬にはほぼすべての品目について実質的な禁輸に踏み切った。EUがロシア政府の対応を強く非難したことなどで、同措置は1週間で解除されたが、ロシアは8月にモルドバからのワインの輸入禁止や、リトアニア製自動車に対する通関検査の強化に踏み切った。

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ロシアの消費者保護当局「ロスポトレブナドゾル」のオニシチェンコ長官は7日、リトアニアから輸入されたチーズやヨーグルトなどを検査したところ、多くの製品で品質に問題があったと説明。同国からの乳製品の輸入を全面的に禁止すると発表した。さらに8日には、2006年から続いていた禁輸を解除し、今年5月に輸入を再開したばかりのグルジア産ワインに対する検査体制を強化する方針を打ち出した。ロシア側は禁輸に踏み切る際、衛生上の問題を理由にしていたが、実際には反ロ路線を掲げるサアカシュビリ大統領に対する制裁で、EU市場ではこの間もグルジアワインが輸入されていた。

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リトアニア外務省によると、ロシアは精肉や魚介類についても輸入規制を検討しているもようだ。リトアニア政府と欧州委員会は、EUは世界で最も厳しい食品衛生基準を採用しており、品質に問題があるとのロシア側の説明には説得力がないと批判している。これに対し、オニシチェンコ長官は「リトアニアはEU市場向けより品質の低い製品をロシアに輸出している。偽物に対価を払うことはできない」と反論している。リトアニアは旧ソ連圏の数少ないEU加盟国として東方パートナーシップを牽引する立場にあり、ロシアとしてはリトアニアに対する制裁を強化することでEUと旧ソ連圏の急接近を阻止する狙いがあるとみられる。

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