2013/10/28

総合 –EUウオッチャー

通信傍受疑惑で独仏が米と個別協議、情報機関の協力関係見直しへ

この記事の要約

EU加盟国は24、25日に開いた首脳会議で、米情報機関による通信傍受問題への対応について話し合い、ドイツとフランスが情報機関の活動のあり方について米政府と個別に協議を行い、「協力の枠組み」について年内の合意を目指すことで […]

EU加盟国は24、25日に開いた首脳会議で、米情報機関による通信傍受問題への対応について話し合い、ドイツとフランスが情報機関の活動のあり方について米政府と個別に協議を行い、「協力の枠組み」について年内の合意を目指すことで合意した。首脳会議では加盟国の多くが米当局による情報収集活動に強い懸念を示し、米政府に説明責任があるとの認識で一致したが、盗聴疑惑の渦中にある独仏と米当局とのつながりが深い英国などとの間で温度差があり、EUとして統一した対応を打ち出すことはできなかった。

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首脳会議は当初、成長戦略や雇用対策などについて協議する目的で招集されたが、直前に米国家安全保障局(NSA)がメルケル独首相の携帯電話を盗聴していた疑惑が報じられたほか、フランスでも7,000万件もの通話が盗聴されていた可能性が浮上し、急きょ議題として取り上げられた。欧州議会からは、盗聴疑惑の全容が明らかになるまで米国との自由貿易協定(FTA)交渉を一時中断すべきだとの声も出ていたが、首脳会議では「一度部屋を離れてしまうと戻るのに苦労する」(メルケル首相)など慎重な意見が大勢を占め、米国との協力関係を再構築することが重要との認識で一致した。EUは声明で、テロ対策において「情報収集は不可欠」としたうえで、協力関係は「尊敬と信頼に基づくものでなければならない」と強調。独仏主導で米国との間で情報機関の活動について「相互理解」を図り、他のEU加盟国も必要に応じて協議に参加できるようにする方針を打ち出した。

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メルケル首相は会議後の会見で、米国との2国間協議では情報機関の協力の枠組みを模索することになると説明。具体的な内容には言及しなかったが、米国、英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの英語圏5カ国が結んでいる、同盟国が互いにスパイ活動を行わないとの原則を定めた「ファイブアイズ(5つの目)」協定のような合意を目指すものとみられる。メルケル首相は「友人同士の間でスパイ行為があってはならない。パートナー間には尊敬と信頼が不可欠であり、EUにとって米国の間で信頼関係を再構築することが急務だ」と述べ、米側に誠意ある対応を求めた。

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