2013/12/2

産業・貿易

スイスが企業幹部の報酬規制を否決、国民投票で65%が反対

この記事の要約

スイスでこのほど、企業幹部の報酬を同一企業で最も低い報酬額の最大12倍までとする規制の是非を問う国民投票が行われ、反対多数で否決された。スイスには食品大手ネスレや製薬大手ノバルティスなど多くの多国籍企業が本社を置き、幹部 […]

スイスでこのほど、企業幹部の報酬を同一企業で最も低い報酬額の最大12倍までとする規制の是非を問う国民投票が行われ、反対多数で否決された。スイスには食品大手ネスレや製薬大手ノバルティスなど多くの多国籍企業が本社を置き、幹部に支払われる高額報酬への不満が高まっている。格差是正を求める賛成派が世論調査で多数を占めた時期もあったが、企業や人材の国外流出による競争力低下を訴える産業界が活発な反対運動を展開した結果、最終的に反対票が65%に上った。

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「1対12イニシアチブ」と呼ばれた今回の国民投票は、社会民主党の青年組織が実施条件の10万人分の署名を集めて実現した。同組織によると、企業トップの報酬と平均給与の格差は15年前の12倍から現在は73倍に広がっている。また、欧州で経営トップの報酬が最も高い企業20社のうち、5社がスイスに本社を置いている。社民党青年部のロート代表は、報酬規制に反対するグループは賛成派の40倍もの資金を投入して大規模なキャンペーンを展開したと指摘。「勝利を収めることはできなかったが、多くの国民が報酬格差について問題意識を持つきっかけになった。報酬制度を変えるために引き続き闘う」と語った。

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スイスでは今年2月、ノバルティスがダニエル・バセラ会長(当時)の退任時に最大7,200万スイス・フラン(約79億円)の支払いを計画していると報じられたのをきっかけに、企業トップへの高額報酬に対する批判が一気に高まった。3月にはすべての上場企業を対象に、株主が法外な退職金や転職時の高額一時金などを阻止できるようにする憲法改正案が国民投票で可決されている。1対12イニシアチブが可決されれば、先進国で最も踏み込んだ報酬規制が導入されるはずだった。

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