2013/12/9

産業・貿易

欧州委が「親・子会社指令」改正案を発表、租税回避目的の悪用を防止

この記事の要約

欧州委員会はこのほど、グローバル企業による課税逃れを防止する対策の一環として、「親・子会社に関する指令(Parent Subsidiary Directive)」の改正案を打ち出した。同指令はEU域内の複数の国で活動する […]

欧州委員会はこのほど、グローバル企業による課税逃れを防止する対策の一環として、「親・子会社に関する指令(Parent Subsidiary Directive)」の改正案を打ち出した。同指令はEU域内の複数の国で活動する企業が二重課税の不利益を被る事態を防ぐ目的で1990年に制定されたが、租税回避の手段として悪用するケースが増えているため、欧州委が現行ルールの見直しを進めていた。欧州委は2014年末までの新ルール導入を目指すとしているが、税制改正には加盟国の全会一致による承認が必要で、調整が難航する可能性もある。

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親・子会社指令はEU域内の複数の国に拠点を置く企業に対する二重課税を防止するための法律で、ある国の子会社が域内の他の国に拠点を置く親会社に支払う配当や利益配分に対する課税を免除することなどを定めている。しかし、一部の企業はこうしたルールや国による税制の違いを悪用して、いずれの国でも課税されない「二重非課税」の状態に置かれている。欧州委はこうした法の抜け穴をふさいで企業の租税回避を防ぐため、親・子会社指令の不備を是正する必要があると判断した。

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欧州委はまず、もっぱら租税回避の目的で域内にペーパーカンパニーを設立するなどの行為をEU全体で規制するため、親・子会社指令の乱用防止規定を刷新し、加盟国に順守を義務づけることを提案している。一方、現行ルールでは域内の他の国に拠点を置く子会社から親会社が受け取る配当は非課税となるが、一部の国では親会社への支払いを課税控除が可能な「債務の返済」として取り扱うケースがあり、この場合は支払国と受取国の双方で課税が免除されることになる。欧州委はこうした「ハイブリッドローン」と呼ばれる金融商品(支払国側では債務として損金算入され、受取国側では配当として税控除を受けられる金融商品)について、今後は子会社の所在国で税控除となる場合は、親会社が拠点を置く国で確実に課税する制度の導入を提案している。

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欧州委のシェメタ委員(税制・関税同盟担当)は「EUの租税政策は域内の企業が活動しやすい環境をつくることに主眼を置いており、国境を越えて事業展開する企業に対する二重課税などの問題に対処してきた。しかし、こうした目的で導入されたEUのルールが租税回避のために悪用されている現状を放置することはできない」と強調。親・子会社指令を改正することで加盟国は税収を確保し、企業にとってはより公正な競争条件が整うことになると説明している。

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