2014/1/6

競争法

EDFの原発新設への英公的支援に疑義、欧州委が調査開始

この記事の要約

欧州委員会は12月18日、仏電力最大手のフランス電力公社(EDF)が英政府の支援を受けて同国に原子力発電所を新設する事業について、EUの公的支援ルールに違反する恐れがあるとして、調査を開始したと発表した。 EDFは10月 […]

欧州委員会は12月18日、仏電力最大手のフランス電力公社(EDF)が英政府の支援を受けて同国に原子力発電所を新設する事業について、EUの公的支援ルールに違反する恐れがあるとして、調査を開始したと発表した。

EDFは10月、仏原子力会社アレバ、中国の広核集団(CGN)、中国核工業集団(CNNC)と共同で総額160億ポンド(約192億ユーロ)を投じて、英南西部のヒンクリーポイントに原発を建設すると発表。既存の原発を含む多くの発電所で耐用期限が迫っており、新たな電力供給源の確保が急務となっている英政府は、同計画を支援するため、同原発に35年間にわたって電力固定価格買い取り制度(FIT)を適用し、取り決めた価格が電力卸売市場の価格を下回った場合に政府が差額を補填する方針を打ち出していた。

これについて欧州委は、事実上の補助金に当たる同支援が総額170億ポンドに達する可能性があると指摘。そのうえで、このような大規模な支援がプロジェクト推進に不可欠かどうか疑問があるとして、各方面の意見を聞きながら調査を進め、可否を判断する。

同プロジェクトでは、アレバが開発した欧州加圧水型原子炉(EPR)2基を設置する。出力1,650メガワットで、英国の電力需要の約7%を賄う能力を持つ。2023年の稼働を予定している。英国での原発新設は1995年以来約20年ぶりで、福島第1原発の事故後に欧州で建設される初の原発となる。

民間の原発事業に対して、このような形で公的支援が行われるのは欧州では初めて。欧州委は13年末に失効したEUの国家補助規制の見直しに際して、当初は原発への公的支援を例外扱いとし、補助金などの交付に際して欧州委の承認を不要とする方針だったが、脱原発を進めるドイツやオーストリアの反発により方針を転換し、妥当性を厳しく審査する方針を10月に打ち出したばかり。今回の案件が初の審査となる。さらに、欧州委が支援を不当と判断し、実施を認めない場合、EDFは同計画を撤回する可能性もあり、その成り行きが注目される。