2014/1/6

環境・通信・その他

欧州委が新規食品規則の改正案発表、クローン動物の子孫由来食品は容認

この記事の要約

欧州委員会は12月18日、クローン技術で生まれた動物および動物由来食品の生産・流通に関する規制案を発表した。1997年に導入された「新規食品に関する規則」を改正し、家畜へのクローン技術の使用とクローン動物の輸入を禁止する […]

欧州委員会は12月18日、クローン技術で生まれた動物および動物由来食品の生産・流通に関する規制案を発表した。1997年に導入された「新規食品に関する規則」を改正し、家畜へのクローン技術の使用とクローン動物の輸入を禁止するほか、クローン動物由来食品の域内での販売も禁止するという内容。一方、クローン動物の子孫から生産された食品の輸入・販売は認められる。今後、欧州議会とEU閣僚理事会で規制案について検討するが、欧州委が2008年に打ち出した新規食品規則の改正案をめぐっては、クローン動物の子孫に由来する食品の扱いについて欧州議会と加盟国の間で調整がつかず廃案になった経緯があり、今回も協議は難航が予想される。

EUは新たな手法や技術によって生産された食品の安全な流通を目的として新規食品規則を導入し、それ以前は域内でほとんど消費されていなかった食品および食品成分について、認可または通知の手続きを経て域内での流通を認めてきた。欧州委は遺伝子組み換え、クローン、ナノテクなどの技術革新を背景に、高い水準の安全性を確保しながら消費者に新たな選択肢を提供するため、2008年1月に認可手続きの一元化などを柱とする新規食品規則の改正案を提示。この中でクローン動物に由来する食品の扱いが最大の焦点となっていた。

08年の改正案をめぐる議論では、欧州議会はクローン動物の子孫由来のものまで含めてトレーサビリティが確立されない限り、域内での流通を認めるべきではないと主張。ラベル表示の義務化を条件に、クローン家畜の子孫に由来する食品の輸入を認める妥協案を提示した。一方、加盟国側はラベル表示は現実的ではなく、クローン食品の主要輸出国である米国やアルゼンチンなどとの貿易摩擦を招きかねないとしてこれを拒否。双方の主張は平行線をたどり、11年3月に改正案は廃案となった。

欧州食品安全庁(EFSA)は08年、クローン技術で生まれた家畜やその子孫から生産された食品と、通常の方法で生まれた家畜から生産された食品の間で「安全性に違いがあるとは思われない」との報告書をまとめ、12年まで計3回にわたり同様の見解を表明している。第3国から輸入される食品がクローン動物の子孫由来のものであるかどうかを区別する有効な手段はないため、欧州委はEFSAによる事実上の安全宣言を根拠に、これらの食品を規制対象から除外した。このほか規制案によると、調査、希少種の保護、医薬品の製造を目的とする場合は家畜へのクローン技術の使用が認められる。