2014/1/6

環境・通信・その他

欧州委が大気汚染防止の規制強化発表、国別排出規制の厳格化など提案

この記事の要約

欧州委員会は12月18日、EU全体で大気汚染を防止するための規制強化策を発表した。加盟国ごとに大気汚染物質の排出上限を定めた「国別排出上限指令」の見直しや、発電所などの中規模燃焼施設に対する新たな規制の導入などを柱とする […]

欧州委員会は12月18日、EU全体で大気汚染を防止するための規制強化策を発表した。加盟国ごとに大気汚染物質の排出上限を定めた「国別排出上限指令」の見直しや、発電所などの中規模燃焼施設に対する新たな規制の導入などを柱とする内容。加盟国に既存ルールの順守と目標の早期達成を促すと同時に、幅広い産業施設に規制を適用し、大気汚染による健康被害を減らして医療費削減や生産性の向上を図る。

EUでは大気汚染物質の制限値を設定し、加盟国にモニタリングと削減計画の策定・実施を義務付けた「大気質枠組み指令」をはじめとするさまざまな規制が導入されており、二酸化硫黄、窒素酸化物、一酸化炭素など人体に悪影響をもたらす物質は以前に比べて大幅に削減された。しかし、多くの加盟国で達成期限を過ぎても大気汚染物質の濃度が規制値を超えているのが現状で、域内で年間およそ40万人が大気汚染による健康被害が原因で早期に死亡している。欧州委はこうした現状を改善するため、既存の規制や政策の見直しを進めていた。

欧州委案によると、光化学スモッグをもたらす地表でのオゾン生成や酸性雨の原因となる物質の排出上限を定めた国別排出上限指令が厳格化され、二酸化硫黄、窒素酸化物、アンモニアなど6つの汚染物質の規制値がそれぞれ引き下げられる。また、産業施設から排出される汚染物質を削減するため、石油精製所などの大規模燃焼施設を対象とする現行規制に加え、発電所や中小の工場など中規模燃焼施設を対象とする新たな規制が導入される。欧州委はこのほか、加盟国が既存の目標を短期間で達成するための具体策、2030年を期限とする新たな目標、都市部の大気質改善策、研究・開発への支援策などを盛り込んだ「欧州大気清浄プログラム」を提案している。

欧州委によると、一連の対策に伴うコストは30年時点で年間34億ユーロに上るものの、健康被害の減少による医療費削減や生産性の向上などでおよそ400億ユーロの経済効果が見込まれる。欧州委のポトチュニック委員(環境担当)は「欧州では以前に比べて大気質が大幅に改善したが、現在も大気汚染による健康被害で多くの人が早くに命を失っている。欧州委が提案する一連の政策を実行した場合、大気汚染による死者数は半減し、すべてのEU市民にとって生活の質が向上する。さらに環境保全や自然保護、欧州経済にとって成長の鍵を握るクリーンテクノロジーの推進にもつながる」と説明している。