2014/1/27

環境・通信・その他

欧州委がシェールガス開発の保護措置勧告、認可前のリスク評価など要求

この記事の要約

欧州委員会は22日、EU域内での水圧破砕法によるシェールガスの採掘にあたり、加盟国に環境や健康への影響を抑えるための保護措置を講じるよう求める勧告を採択した。欧州議会はシェールガスなど非在来型ガスの開発を計画するすべての […]

欧州委員会は22日、EU域内での水圧破砕法によるシェールガスの採掘にあたり、加盟国に環境や健康への影響を抑えるための保護措置を講じるよう求める勧告を採択した。欧州議会はシェールガスなど非在来型ガスの開発を計画するすべての事業者に対し、事前に環境アセスメントの実施を義務付ける規制の導入を求めていたが、英国をはじめとするシェールガス開発推進派や業界団体などの強い働きかけにより、法的拘束力のない勧告の形で落ち着いた。欧州委は加盟国に対し、基本原則に沿って6カ月以内に適切な措置を講じるよう求めている。

地下2,000~3,000メートルの岩盤層に含まれるシェールガスは、水圧破砕(フラッキング)による採掘法が確立したことで米国を中心に生産が本格化し、世界のエネルギー需給構造に大きな影響を及ぼしている。しかし、岩盤に大量の水と化学薬品を高圧で注入して亀裂をつくり、そこからガスを回収する水圧破砕法をめぐっては、地中にメタンが漏出して土壌や地下水を汚染する危険性などが指摘され、環境面の懸念が高まっている。

EU内では英国やポーランドなどがシェールガスの開発推進を主張しているのに対し、フランスでは水圧破砕法を用いた非在来型資源の開発・採掘を禁止する法律が制定され、実質的にシェールガス開発が不可能な状況にある。欧州委員会は昨年7月、水圧破砕法によるシェールガス開発について当面はEUレベルでの規制を見送り、各国の判断に委ねる方針を固めたが、欧州議会では予防原則に基づいて共通ルールを定めるべきだとの声が高まっていた。

欧州委は加盟国に対し◇水圧破砕法によるシェールガス開発を認可する前に、環境や健康面のリスク評価を行う◇採掘が開始される前に現地の河川や湖、大気、土壌の状態をチェックし、採掘・生産過程での変化やリスクを監視する◇シェールガス開発に伴う温室効果ガスの排出を監視する◇採掘・生産過程で使用される化学物質を公表する――などを勧告している。欧州委はまた、どのような保護措置を講じたかを年1回報告するよう求めており、提出された報告書を基に各国の状況を比較した「スコアボード」を公表して適切な措置が取られているか厳しくチェックする。

欧州委のポトチュニック委員(環境担当)は「シェールガスは欧州のいくつかの地域で大きな期待を担っているが、同時にEU市民にとっては懸念材料となっている。環境や健康面の懸念に対応し、開発事業者や投資家の予見可能性を高めるため、基本原則に沿って適切な措置を講じるよう加盟国に求める」とコメントしている。