2014/2/17

産業・貿易

欧州委が化粧品のアレルゲン使用禁止を提案、老舗香水メーカーに打撃

この記事の要約

欧州委員会は13日、香水の原料として広く使用されているコケ類由来の香料などをアレルゲン(アレルギー誘発物質)として規制する方針を打ち出した。2009年に制定されたEU化粧品規則を改正し、アレルギー症例との関連性が指摘され […]

欧州委員会は13日、香水の原料として広く使用されているコケ類由来の香料などをアレルゲン(アレルギー誘発物質)として規制する方針を打ち出した。2009年に制定されたEU化粧品規則を改正し、アレルギー症例との関連性が指摘される「安全でない」3つの物質の化粧品への使用を禁止するという内容。この中にはシャネルの「No.5」やディオールの「ミス・ディオール」といった人気商品に使用されている香料が含まれており、業界側の反発が予想される。欧州委は今後3カ月にわたって意見募集を行い、年内に規制案をまとめる。

香水や化粧品に使用される物質の安全性をめぐっては、欧州委の消費者安全科学委員会(SCCS)が12年6月に香料アレルゲンに関する報告書を公表している。それによると、欧州では人口の1-3%が香料に対してアレルギーを有しており、天然物抽出物のオークモス(樫の木に生えるコケ)やツリーモス(不老草)などに接触した数千人の肌に発疹、かゆみ、まぶたの腫れなどの症状がみられた。

SCCSはこうした調査結果をもとに、オークモスとツリーモスに含まれる「アトラノール」と「クロロアトラノール」、スズランの香りを再現した合成香料「HICC」を危険なアレルゲンに指定し、化粧品への使用を禁止するよう提言。さらにレモン油など柑橘系の芳香油に含まれるシトラール、チョウジ油の主成分であるオイゲノール、南米原産のトンカマメの種子などに含まれるクマリンなど12の化学物質について、各成分の含有率を0.01%以下に抑えるよう勧告していた。

欧州委はSCCSの勧告に沿ってアトラノール、クロロアトラノール、HICCの使用を禁止するほか、その他のアレルゲンについては化粧品や香水メーカーに対し、パッケージへの成分表示を義務付けることを提案している。さらにSCCSが安全性を懸念している12の化学物質についてはさらに詳しい調査を行い、適正な含有率の上限を決定するとしている。

専門家によると、欧州委の提案する規制が導入された場合、現在販売されている香水の約9割が原料の変更を迫られ、シャネルやディオールなど人気ブランドの香水も「再調合」を余儀なくされるという。さらに自然由来の原料を使ったオーガニック化粧品にも影響が及び、とりわけ中小のメーカーは深刻な打撃を受けることになりそうだ。