2014/3/3

産業・貿易

ファンドマネジャーの賞与規制、加盟国と欧州議会が修正案で合意

この記事の要約

EU加盟国と欧州議会の代表は2月25日に開いた調停委員会で、ファンドマネジャーの賞与(ボーナス)に対する規制案の内容で合意した。銀行員を対象とした賞与規制と類似したルールを導入することで、EU市民の年金や貯金を預かる資産 […]

EU加盟国と欧州議会の代表は2月25日に開いた調停委員会で、ファンドマネジャーの賞与(ボーナス)に対する規制案の内容で合意した。銀行員を対象とした賞与規制と類似したルールを導入することで、EU市民の年金や貯金を預かる資産運用会社による過度のリスクテイクを抑制し、投資家保護を図るのが狙い。閣僚理事会と欧州議会の正式な承認を経て新ルールが導入される。

ファンドマネジャーに対する賞与規制は、投資信託に関するEUの共通ルールを定めた「譲渡可能な証券の集団投資事業(UCITS)に関する指令」に準拠する投資ファンドの運用担当者に適用される。ヘッジファンドやプライベートエクイティファンドなどは規制の対象外。当初は銀行員の報酬規制と同様、ファンドマネジャーについてもボーナスの支給額を年間給与と同額までに制限する案が検討されていたが、業界側は厳格な規制が導入された場合、優秀な人材を確保するために固定給を引き上げなければならず、かえって逆効果になるとして強く反発。規制案は昨年7月の欧州議会本会議で否決され、修正合意に向けて調整が続いていた。

新たな規制案によると、投資信託などの運用会社はファンドマネジャーに支払うボーナスのうち、40%以上の支給を最低3年繰り延べなければならない。また、現金による支給分の50%以上を株式で支払う必要がある。加盟国は新指令の発効から18カ月以内に国内法を整備しなければならず、具体的な規制の適用範囲は各国の金融当局が決定する。

欧州議会はこのほか、マネー・マーケット・ファンド(MMF:短期金融資産に特化して運用を行う投資信託)も報酬規制の対象とすることや、デポジタリ(ファンド資産の保管者)の役割を強化して運用資産の監視を委ねることなどを主張している。

EU加盟国との交渉にあたった欧州議会のスベン・ギーゴールド議員は、「報酬規制の修正案で合意が成立したことで、投資ファンドによる高リスク取引を抑制して投資家保護を強化するための道筋がついた」と成果を強調。「デポジタリに対する規制を強化することで、ナスダックの元会長バーナード・マドフが引き起こした世界的規模の投資ファンド詐欺のような不正行為が欧州で発生する事態を防ぐことができる」と語った。