欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/4/7

EUその他

監査法人の規制強化案を可決、「輪番制」ルールは大幅緩和=欧州議会

この記事の要約

欧州議会は3日の本会議で、監査法人に対する規制を強化する法案を賛成多数で可決した。「ビッグ4」と呼ばれる大手監査法人による寡占状態を改善し、監査業務の透明性を高めて金融危機の再発防止につなげるのが狙いで、域内の上場企業や […]

欧州議会は3日の本会議で、監査法人に対する規制を強化する法案を賛成多数で可決した。「ビッグ4」と呼ばれる大手監査法人による寡占状態を改善し、監査業務の透明性を高めて金融危機の再発防止につなげるのが狙いで、域内の上場企業や金融機関に監査法人の定期的な変更を義務づける「輪番制」の導入や、監査先の企業に対する非監査業務の提供禁止などを柱とする内容。EU加盟国の正式な承認を経て新ルールが導入される。

監査法人に対する規制をめぐっては、2000年代初めに米国でエンロンやワールドコムなど大手企業の不正会計事件が発覚したのを受けて見直しが議論され、監査責任者の交代制導入や、担当する企業への非監査業務の制限といった改革が実施された。しかし、先の金融危機では監査法人が問題なしと認定した多くの金融機関が深刻な状況に陥ったことから、監査の信頼性が問われる事態となり、欧州委が抜本的な改革に向けた具体策の検討に着手。上場企業や金融機関など、国境を越えて活動する企業向けの監査業務を対象とする規制強化策を11年11月に打ち出し、加盟国と欧州議会が検討を重ねてきた。

採択された法案によると、上場企業や金融機関は監査法人の選定に際して入札が義務づけられる。監査法人が同一企業の監査を続けて担当できるのは最長10年だが、入札を経て契約を更新する場合は最長10年の延長が可能。さらに、複数の監査法人による共同監査を受けている場合は、最長14年まで延長できる。欧州委の原案では、監査法人との契約期間は最長6年で、複数の監査法人を採用している場合でも契約延長は最長9年となっていたが、企業側の負担が大きすぎるとして、より緩やかな内容に修正された。

一方、顧客企業との利益相反を防ぐため、監査法人は顧客企業に対し、税務コンサルティングなど財務・投資戦略に影響を与えるような監査業務以外のサービスを提供することが禁止される。それ以外の非監査業務に関しては、報酬に上限(監査報酬の最大70%)が設けられる。

このほか監査サービスの質を高めて投資家により関連性の高い情報を提供するため、監査法人はより詳細な監査報告書の提出が求められる。さらにアカウンタビリティ向上の観点から、各企業で内部監査を担当する監査委員会の権限を強化し、監査法人の業務内容を注意深く監視することや、現在より容易に株主が監査人の解任を提案できるようにすることなどが法案に盛り込まれている。