英国議会の下院は6月27日、同国がEUと締結した離脱協定のうち、英領北アイルランドとEU加盟国アイルランドの自由な通商を維持するため設けたルールの一部を一方的に破棄する法案の審議に入ることを賛成多数で承認した。大きな波紋を広げている同法案だが、成立に向けて最初のハードルを越えた。
同法案は、EUと英政府が2020年に合意した「北アイルランド議定書」の規定を一方的に見直し、英本土から北アイルランドに入る物品の通関・検疫手続きを不要とすることを目的としている。
北アイルランド議定書は、北アイルランドが事実上、EU単一市場と関税同盟に残ることで、通関が北アイルランドとアイルランドの間では行われないようにする代わりに、英本土から北アイルランドに流入する物品については国内の移動であるにもかかわらずEUの規制が適用され、通関・検疫を必要とするというもの。
英政府は見直しを求めてEUと協議しているが、進展がないことから、議定書のルールの一部を一方的に破棄できるようにする法案を6月13日に提出していた。
同法案をめぐっては、EUが猛反発しているほか、英国内でもメイ前首相が国際協定に違反するとして批判するなど、異論が多い。それでも、下院は与党・保守党が議席の過半数を占めていることから、賛成295、反対221で審議を進めることが承認された。
ただ、同法案が成立するかは予断を許さない状況だ。とくに上院では与党が過半数を割り込んでおり、内容が厳しく精査されることになる。