EUの対ロ制裁による凍結資産は1.9兆円、中銀資産は含まず=欧州委

欧州委員会のレンデルス委員(司法担当)は12日、ウクライナへの軍事侵攻を受けてEUが発動したロシアへの経済制裁について、これまでに凍結したロシア関連の資産が約138億ユーロ(約1兆9,250億円)に上ることを明らかにした。ただし、大部分はEU加盟国のうち5カ国によるもので、同委員は他の加盟国にも確実に制裁を実行するよう呼びかけた。

レンデルス氏はEU司法・内務相理事会の非公式会合が開かれたチェコのプラハで記者団に語った。凍結した資産額は、制裁対象となっているオリガルヒ(新興財閥)などの個人と団体が保有する銀行預金などの現金と、加盟国が差し押さえたヨットや不動産などの評価額を合わせたもの。ロシア中央銀行の凍結資産(5月時点で約240億ユーロ)は含まれていない。

レンデルス氏は「これまでに加盟国から138億ユーロ相当の資産を凍結したと報告を受けた。ただ、このうち120億ユーロ以上は5カ国によるもので、引き続き他の国にも同様の取り組みを求める」と述べた。5カ国の具体名は明かさなかった。

EUは2月のウクライナ侵攻以降、プーチン政権を支えるオリガルヒや政府高官などの個人1,160人と98団体を対象に、EU内の資産凍結や渡航禁止などの制裁を科してきた。ただ、資産の差し押さえなどは加盟国に委ねられており、制裁逃れを刑事罰の対象としている国や、事例ごとに刑事罰または行政罰の対象としている国、全て行政罰の対象としている国と、対応にばらつきがある。

こうした現状を踏まえ、欧州委は5月、EUが発動した制裁に対する違反行為をテロや人身売買、マネーロンダリング(資金洗浄)などと同等の「犯罪」と位置づけることを提案した。資産隠匿などの直接的な制裁回避に加え、弁護士や銀行が資産の凍結を妨害したり、意図的に凍結を怠るなどの行為も犯罪とみなすという内容。EU共通ルールの下でロシアに対する制裁の抜け道をふさぎ、凍結資産をウクライナの復興支援に充てる狙いがある。レンデルス氏は法制化に向け、今秋にも欧州議会と加盟国の承認が得られるとの見通しを示した。

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