欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/11/3

EU産業・貿易

ユーロ圏の銀行、2期連続で融資基準緩和

この記事の要約

欧州中央銀行(ECB)が10月29日公表した今年7~9月期の銀行貸出調査によると、企業・家計向けの融資基準を緩和したユーロ圏の銀行が、基準を引き締めた銀行を上回った。ユーロ圏では4~6月期に融資基準が7年ぶりに緩和に転じ […]

欧州中央銀行(ECB)が10月29日公表した今年7~9月期の銀行貸出調査によると、企業・家計向けの融資基準を緩和したユーロ圏の銀行が、基準を引き締めた銀行を上回った。ユーロ圏では4~6月期に融資基準が7年ぶりに緩和に転じていた。一方、銀行融資に対する企業の需要も前期に続いて拡大しており、第4四半期も引き続き需要増が見込まれている。

ECBは9月24日~10月9日にユーロ圏の137行を対象に調査を実施した。これによると、7~9月に企業向け融資の基準を「緩和」した銀行は、「厳格化」した銀行を2%上回った。これは4~6月の3%から縮小したものの、引き続き緩和傾向にあることが確認された。国別にみると、フランスとドイツで緩和傾向にあるのに対し、イタリアとスペインは横ばい、オランダは引き締め傾向にある。住宅ローンの融資基準はフランスで大幅に緩和されたのに対し、イタリア、スペイン、オランダは横ばい、ドイツでは引き締められた。

一方、資金需要の動向をみると、4~6月に企業の融資需要が「増加した」と回答した銀行が、そうでない銀行を6%上回った。国別にみると、特にドイツ、フランス、スペインで需要が拡大したのに対して、先ごろ公表されたストレステスト(健全性審査)で9行が「資本不足」と判定されたイタリアでは、需要が大幅に落ち込んだ。

今後の見通しに関しては、17%の銀行が第4四半期に企業の融資需要が拡大すると予測しており、融資基準もさらに緩和される見通し。オランダ金融大手INGのエコノミストは「ECBの調査結果により、最悪の信用サイクルは過ぎ去ったとの見方が補強された」とコメントしている。

ただ、今回の調査では、ユーロ圏主要国の景気回復が失速していることを反映して、設備投資のための融資需要が伸び悩むなどの懸念材料も出てきた。ECBは「7~9月期は企業の業況見通しへの不安がわずかながら信用基準の引き締めにつながった」と分析。その上で、大手行のバランスシートを詳細に検証し、銀行システムの健全性を強化することで「企業、家計への融資が促進され、欧州経済の成長につながる」と指摘している。