加盟国がガス消費15%削減で合意、ガス依存度などに配慮し例外規定も

EUは7月26日、ブリュッセルでエネルギー相理事会を開き、ロシアからの天然ガス供給がさらに減少、または途絶した場合に備え、加盟国が2023年春までガス消費量をそれぞれ15%削減することで合意した。エネルギー需要が増える冬場に供給不足となる事態を防ぐため、EU全体で十分なガス在庫を確保するための措置。ただ、欧州経済に打撃を与えかねない一律の削減に難色を示す国も多く、多くの例外規定を設けることで合意にこぎつけた。

加盟国にガス消費の削減を求める「欧州ガス需要削減計画」は、欧州委が7月20日に提案していた。今回の合意によると、加盟国は8月1日~23年3月31日の期間、過去5年間の同時期平均と比べて天然ガス消費量を15%削減することが求められる。当初は自主的な取り組みとし、目標達成に向けた具体策はそれぞれ各国が決める。EUは21年にロシアから全体の約4割にあたる1億550億立方メートルの天然ガスを輸入しており、15%削減が実現すると450億立方メートルの節約になる。

ただし、加盟国による天然ガスへの依存度や貯蔵能力の違いなどを考慮して、多くの例外規定が設けられた。島しょ国など他の加盟国のガス網と相互接続されていない国(アイルランドやキプロスなど)は、削減義務が免除される。電力網が欧州の電力システムと同期しておらず、発電をガスに大きく依存している国も免除される。また、鉄鋼など重要な産業で使用されるガスは削減対象から除外することができる。一方、ガス貯蔵目標を早期に達成した場合は緩和措置を求めることができる。

このほか欧州委の提案では、加盟国の自主的な取り組みにもかかわらず需給がひっ迫した場合、欧州委がEUレベルで「警報」を発動し、加盟国にガス消費の15%削減を義務付けることができるとしていたが、エネルギー相は閣僚理事会の役割を強化することで合意した。ロシアがガス輸出を止めるなどの緊急事態により、深刻なガス不足に陥るリスクが極めて高いと欧州委が判断したり、5つ以上の加盟国が国レベルで警報を発動し、欧州委にEUレベルで警報を発するよう求めた場合、欧州委の提案に基づいて閣僚理が強制措置の是非を最終判断する。

欧州委のフォンデアライエン委員長は声明で「プーチン(露大統領)による全面的なガス途絶の脅威に立ち向かうための重要な一歩だ」と合意を歓迎。シムソン委員(エネルギー担当)は「最悪の事態に備える必要性について合意することができた。EU全体でガス貯蔵に取り組み、状況が悪化した場合に各国が連携して対応するための土台が整ったことは重要な成果だ」と強調した。

今回の合意を受け、フランスのボルヌ首相は26日、冷暖房の使用制限や照明の計画的な消灯などを柱とする公的機関の省エネ対策を発表した。冷房は室内温度が26度以上、暖房は19度未満の場合に限り使用を認めることや、電子機器の電源を入れたままにしないことなどが盛り込まれている。

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