欧州委員会は11日、財政赤字削減や気候変動対策などに4,300億ドルを投じる米国の「インフレ削減法」に盛り込まれた電気自動車(EV)購入者に対する税額控除について、世界貿易機関(WTO)の規則に違反する可能性があるとの懸念を表明した。北米以外で組み立てられた車両は税額控除の対象外となる点を問題視し、こうした差別的な要件を取り除くよう求めている。
インフレ削減法はバイデン大統領の署名を経て16日に成立した。EV購入者に対する税額控除は、インフレが加速する中で国民の負担を軽減しながらEVの販売を促進するのが狙い。EV車両の購入に際し、1台当たり最大で7,500ドルの税額控除が受けられるという内容だが、対象となる車両は最終組み立て地が北米(米国、カナダ、メキシコ)であることが要件となっている。
欧州委のフェレール報道官は11日の記者会見で、EV向け税額控除は「米国以外の製造業者に対して差別的であり、当然ながらWTOルールと相容れない可能性があることを意味する」と指摘。税額控除が「EVの販売を促進する重要なインセンティブ」であり、最終的に温室効果ガスの排出削減にも貢献すると認めたうえで、「導入される措置は公平でなければならない」と強調し、「米側に差別的な要件を取り除いてWTOルールを順守するよう呼びかける」と述べた。
EV向け税額控除をめぐっては、最終組み立て地のほか、バッテリーの原材料と部品の調達価格割合も適用の要件となっており、EV用電池に必須のリチウムは中国、コバルトはコンゴ民主共和国からの輸入に依存する国内のメーカーからも見直しを求める声が上がっていた。米国自動車イノベーション協会(AAI)によると、米市場には現在72のEVモデルが投入されているが、そのうち約7割が税額控除の対象外になるとみられている。