子供を持つ親や介護者である労働者の仕事と家庭生活の調和を促進することで、労働市場における男女平等を実現し、個人の生活の質を向上させることを目指すEUの「ワーク・ライフ・バランス指令」が2日、施行から3年の実施期限を迎えた。EU加盟国は同日までに国内法を制定するよう義務付けられていた。欧州委員会は今後、各国の国内法に盛り込まれた規定が新指令の内容と合致しているか評価し、必要に応じて修正や追加措置を求める。
EUでは労働市場へのアクセスの平等や雇用における男女の均等な機会と待遇を確保するため、これまでに母親休業指令や育児休業指令を制定している。欧州委は2008年、産前産後の休業期間の延長を柱とする母親休業指令の改正案を発表したが、欧州議会と閣僚理事会の承認が得られなかったため、15年に改正案を撤回。代わりに17年4月、新たに父親休業や介護休業に関する規定を盛り込んだワーク・ライフ・バランス指令案を発表した。同指令は欧州議会と閣僚理の採択を経て19年6月に成立し、8月1日付で発効した。
新指令によると、子供の出生時にすべての父親は10日間の有給休暇を取得でき、病気休暇と同水準の賃金が保証される。すでに多くの加盟国で出生時の父親休業が認められているが、期間にはばらつきがあり、有給休暇の規定がないケースもあった。父親休業の権利は法律婚だけでなく、事実婚や同性婚などの場合でも同等に扱われる。
介護休業についてもこれまで国によって扱いが大きく異なり、EU共通の規定は存在しなかった。加盟国は新指令に基づき、重い病気の家族や扶養家族を持つすべての就労者が年間5日の有給休暇を取得できる仕組みを整えなければならない。
さらに育児休業に関する規定も拡充される。現行の育児休業指令では、父親と母親のそれぞれに最低4カ月の休業期間を付与しなければならず、そのうち1カ月は両親の間で譲り合うことはできないと定めている。これに対し、新指令ではそれぞれ4カ月の休業期間のうち、両親の間で譲渡できない期間が2カ月に延長され、その間は加盟国ごとに定められた水準の給付金が支払われる。EUはこれにより、父親による育児休業の取得が促進されるとみている。
このほか新指令には柔軟な働き方に関する規定も盛り込まれている。育児休業指令では就労者が育児休業から復帰する際、時短勤務やフレックス勤務を要求する権利を認めているが、新指令では少なくとも8歳以下の子どもがいる親と全ての介護者に対し、勤務時間の短縮とフレックスタイム、リモートワークなど勤務場所の融通性を要求する権利を保障している。