EUは11月にエジプトで開催される国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)に向け、米国や中国などの経済大国に対して温室効果ガス削減目標の引き上げを求めるもようだ。ロイター通信が25日、COP27に向けた交渉方針の草案をもとに報じた。昨年のCOP26で合意した「産業革命前からの気温上昇を1.5度に抑える努力を追求する」取り組みについて、各国の対応は現在のところ「不十分」と警告し、さらなる対策の強化を呼びかける方針とみられる。
ロイターが入手した草案には「EUはすべての締約国に対して野心的な目標と政策を打ち出すよう求め、とりわけまだ取り組みが十分ではない主要経済国に対し、早急に目標の見直しまたは引き上げを促す」と明記されている。ただし、草案は今後数週間にわたり加盟国間で協議され、採択までに修正される可能性がある。
COP27では気候変動の原因となる温室効果ガス削減を進めるだけでなく、干ばつや熱波、飢饉といった気候変動による悪影響や被害を防ぐための対策と、排出量が比較的少ないにもかかわらず、そうした悪影響や被害を受けてきたアフリカ諸国をはじめとする途上国への適応支援が焦点となる。しかし、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を起点とする天然ガス価格の高騰を背景に、一部で石油や石炭に回帰する動きがみられ、交渉の行方は不透明感が増している。
一方、欧州環境庁(EEA)が25日公表した報告書によると、EUでは過去30年間に温室効果ガス排出量が15億4,600万トン減少し、1990年比で約34%の削減を達成した。2020年までに1990年比で20%削減する目標は達成したものの、EUは30年までに1990年比で55%削減し、50年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにする目標を掲げている。EEAは現在のペースではこれら2つの目標を達成することは難しいと警告している。
報告書によると、EUでは1990年からの30年間に運輸を除く7分野で温室効果ガスの排出量が減少した。削減幅が最も大きいのはエネルギー産業(約50%)で、製造・建設業、家計・商業・公共施設、工業プロセス、農業、燃料、廃棄物処理と続いている。一方、航空輸送を含む運輸部門はこの間に排出量が7%増加した。