英国のガス・電力市場監督局(Ofgem)は26日、家庭向け電気・ガス料金の大幅な引き上げを発表した。10月から標準的な世帯が1年間に支払う光熱費は3,549ポンド(約57万円)に設定され、現在の1,971ポンドから80%引き上げられる。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を背景に、天然ガスなどの価格高騰を受けた措置で、約2,400万世帯に影響が及ぶとみられる。
英国では光熱費の急激な値上がりから消費者を守るため、Ofgemが電力・ガスの小売価格に上限を設けている。これまでは半年ごとに上限が見直されてきたが、23年以降は四半期ごとに改訂されることになっており、一段の引き上げが想定されている。ロシアからのガス供給が大幅に減少する中、暖房需要が高まる冬場に向けて需給逼迫の懸念が高まっており、英調査会社コーンウォール・インサイトは標準世帯が支払う光熱費について、23年第1四半期に5,387ポンド、第2四半期には6,616ポンドに達すると予測している。
Ofgemのブレアリー最高経営責任者(CEO)は、光熱費の大幅な引き上げが全国の世帯に「多大な影響を及ぼす」と述べ、エネルギー危機を克服するため「政府の迅速かつ断固とした対応」が不可欠だと強調。政府が5月に発表した総額150億ポンドの生活支援パッケージでは「もはや不十分」との認識を示し、「10月と来年に実施される光熱費の上限引き上げに対応するため、(ジョンソン首相の後任となる)新首相は目の前にある危機の規模に見合った対応策を迅速に講じる必要がある」と指摘した。
英国では辞意を表明したジョンソン氏の後任を選ぶ与党・保守党党首選の決選投票が進んでおり、9月5日に投票結果が公表されて次期首相が事実上決まる。ザハウィ財務相は「支援を拡大する必要があると承知している」と述べ、新首相が決まり次第、早急に家計や企業への追加支援策をまとめると説明した。