11日に実施されたスウェーデン総選挙は14日、極右政党を含む野党の右派陣営が過半数を獲得することが確実となり、少数与党の社会民主労働党(中道左派)を率いるアンデション首相は同日、辞意を表明した。これにより、スウェーデンでは8年ぶりに政権が交代し、右派陣営による連立政権が誕生する見通し。国民の大部分が支持する北大西洋条約機構(NATO)への加盟方針は維持される一方、移民の受け入れに寛容だったこれまでの政策は見直されることになりそうだ。
最新の開票結果によると、社民党が第1党を維持したものの、反移民を掲げる極右のスウェーデン民主党が第2党に躍進。349議席のうち、野党4党による右派陣営が過半数の176議席を獲得し、中道左派陣営の173議席を上回った。
アンデション氏は14日の記者会見で「僅差だが、右派が多数派となった」と敗北を認め、15日に議会に辞表を提出した。アンデション氏は昨年11月、スウェーデン初の女性首相に就任。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受けて欧州の安全保障環境が大きく変化する中、今年5月には長年にわたるスウェーデンの軍事的な中立政策を放棄し、NATOに加盟申請した。
右派陣営による連立交渉は、選挙で第3党となった穏健党を中心に進むものとみられる。極右のスウェーデン民主党に対しては、右派内でも警戒感が強いためだ。連立交渉がまとまれば、穏健党のクリステルソン党首が新首相に就任する可能性が高い。同氏はインスタグラムに動画を投稿し、新政権樹立に向けて作業を開始すると表明。スウェーデン社会で不満が高まっていると指摘したうえで、「私からのメッセージは分裂ではなく、団結させたいということだ」と強調した。
ただ、民主党の政権参加をめぐって右派内で意見が分かれており、組閣に時間がかかる可能性がある。また、交渉が不調に終わった場合、第1党の社民党を軸に左派が少数与党政権を樹立する可能性もある。いずれにせよ、与野党の議席数が拮抗しているため、不安定な政権運営を強いられそうだ。