欧州委員会の報道官は9月26日、EU加盟候補国のセルビアがロシアと外交政策に関する定期協議の実施で合意したことについて「深刻な疑問」を提起した。EUに加盟するには外交政策をEUと一致させることが不可欠だが、ロシアのウクライナ侵攻を非難する国連総会の決議では賛成にまわったものの、ロシアに対する西側諸国の制裁に加わることを一貫して拒否している。
ロシアのラブロフ外相とセルビアのセラコビッチ外相は9月23日、外交分野の「協議に関する計画」と称する文書に署名した。セラコビッチ氏によると、これは二国間および多国間の活動に関する協議を想定したものだが、あくまでも「技術的」な内容で、安全保障政策に関するものは含まれていないという。
セルビアは2003年に他の5つの西バルカン諸国とともに潜在的EU加盟候補国と認定され、09年に加盟申請した。その後、13年3月に正式に加盟候補国に認められ、14年1月に加盟交渉を開始した。ただ、同国は歴史的にロシアとのつながりが深く、今年4月の大統領選で再選を果たして2期目に入ったブチッチ政権は、欧州とロシアの間でバランスを取ることに腐心してきた。
欧州委員会のスタノ報道官は記者会見で、プーチン露大統領が部分動員令を発令し、ウクライナ東・南部4州でロシア編入への賛否を問う「住民投票」が開始された直後に、セルビアとロシアの間で新たな協議文書が署名されたと指摘。両国の合意は「関係強化の意図を示す明確なサイン」であり、EU加盟候補国の行動として「深刻な問題を提起している」と述べた。
スタノ氏はさらに、セルビアはEU加盟を戦略的優先事項と位置づけているにも拘わらず、「ロシアとの関係は通常通りではありえない」とのEUの立場を無視しており、「外交問題を含むEUの政策との整合性を欠く」と指摘。「EUとして今回の事態を重く受け止めており、調査を進めている」と牽制した。