EUが中国によるリトアニアへの差別的な貿易措置、EU企業が持つ特許権制限を不当とし、世界貿易機関(WTO)に提訴している問題で、欧州委員会は7日、WTOに紛争処理小委員会(パネル)の設置を要請したと発表した。これによって両問題は本格的な通商紛争に発展した。
中国はリトアニアが2021年、台湾の大使館に相当する代表機関の設置を認め、11月に首都ビリニュスに「台湾代表処」を開設したことに猛反発し、同年12月から報復措置としてリトアニア製品の通関や輸入申請を拒否したり、EU加盟国の企業に対しリトアニア産の原材料をサプライチェーンから排除するよう圧力をかけている。
また、2020年には中国最高人民法院が外国訴訟差止命令を出し、スマートフォンなどに使用される無線通信技術の標準規格に準拠した製品を製造する上で不可欠な標準必須特許(SEP)を巡る訴訟をEU企業などの特許権者が中国国外の裁判所で起こすことを禁止した。
欧州委は両案件について、WTOのルールに反する不当な措置で、EU企業に大きな打撃を与えているとして、22年1月から2月にかけて提訴。紛争処理手続きの第1段階である当事者間協議で解決できなかったことから、パネル設置要請に踏み切った。
欧州委によると、リトアニアを巡るケースでは、同国産のアルコール飲料、牛肉、乳製品、木材などの輸入を中国が検疫上の理由という名目で差し止めていることも発覚した。EUは何が問題なのか説明を求めたが、中国側は応じておらず、欧州委は科学的根拠のない不当な輸入制限として反発している。これらの措置によってリトアニアの22年1~11月の中国向け輸出は前年同期から80%も減少した。
WTOはパネルを23年1月に設置する見込み。欧州委は裁定が下るまで最長1年半を要すると予想している。